国政報告

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質問主意書

質問第一六八号

いわゆる共謀罪法に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

平成二十九年六月十六日

糸 数 慶 子

参議院議長 伊 達 忠 一 殿

いわゆる共謀罪法に関する質問主意書

第百九十三回国会終了間際の六月十五日未明、参議院法務委員会で審査中であった「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」、いわゆる共謀罪法案について、本会議で法務委員長による中間報告が行われ、その後、可決された。

共謀罪法案の対政府質疑は、衆議院で三十時間二十分、参考人質疑は五時間五十分であった。一方、参議院ではわずか十七時間五十分、参考人質疑は五時間であった。

六月十三日の参議院法務委員会では、少数会派の質疑を残して委員会が散会となったため、多くの疑問や懸念が解消されないままとなった。そこで、以下質問する。

一 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「国際組織犯罪防止条約」という。)第十六条は、犯罪人引き渡しについて規定しているが、これまで、日本が、この条約に加盟していないことで犯罪人引き渡しにおいて不都合が生じたことはあるか。

二 国際組織犯罪防止条約第十六条第一項は、いわゆる双罰性の要件を掲げているが、我が国において規定されていないヘロインの輸入の共謀罪について、米国から犯罪人引き渡しを求められた事件において、東京高等裁判所平成元年三月三十日決定は、双罰性の要件の判断について、構成要件的要素を捨象した社会的事実関係に着目して、その事実関係の中に、我が国の法の下で、犯罪行為と評価されるような行為が含まれているか否かを検討すべきであるとし、その上で当該事件における具体的な行為を検討して、ヘロイン輸入の幇助罪に該当するとして犯罪人引き渡しを認めていたと理解しているが、政府も同様の見解であるか。

三 テロ等準備罪(共謀罪)を新設しなくても、犯罪人引き渡しについて困る事例というのはあまり想定できないのではないか。

四 犯罪人引き渡しについて、二国間条約で対応している例があると思われるが、現在、我が国が、犯罪人引き渡しについて、二国間条約を締結している国はどこか。

五 現在、犯罪人引き渡しを行うための二国間条約の締結について我が国と協議している国はあるか。

六 国際組織犯罪防止条約第十八条は、捜査、訴追、司法手続における相互援助について規定しているが、捜査、訴追、司法手続における相互援助について規定している二国間条約を我が国と締結している国はあるか。

七 我が国が国際組織犯罪防止条約に署名してから十六年以上、この条約を締結していないが、捜査、訴追、司法手続における相互援助を得られないために不都合があった事例はあるか。そのような不都合がこれまでなかったから、この条約に加盟してなかったのではないか。

八 現在の自民党・公明党連立政権に代わってから今年になるまで、テロ等準備罪(共謀罪)を新設する法案が国会に提出されなかったのも、国際組織犯罪防止条約に加盟しないことによる不都合がほとんどないからではないか。

九 テロ防止関連諸条約のうち、我が国はこれまでに、十三のテロ防止関連諸条約を締結しているという理解でよいか。

十 我が国が締結しているテロ防止関連諸条約は、国内法を整備した上で締結したのか。

十一 我が国がテロ防止関連諸条約を締結するに当たって、国内法に処罰規定を新設した例をすべて挙げられたい。

十二 我が国は、全てのテロ防止関連諸条約を締結しているのか。

十三 テロ防止関連諸条約のうち、我が国がまだ締結していない条約があれば、その条約名と、我が国が締結していない理由を明らかにされたい。

十四 政府がテロ対策の必要性を主張するのであれば、我が国が締結していないテロ防止関連諸条約の国内法も整備すべきではないか。

十五 テロ防止関連諸条約と、今回のいわゆる共謀罪法とは直接関係していないという理解でよろしいか。

十六 共謀罪法による改正後の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「改正組織的犯罪処罰法」という。)第七条の二の証人等買収罪については、かつての政府案における証人等買収罪と比べると、法定刑が重くなっている。法定刑を重くしたのは、昨年成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律によって、犯人蔵匿罪、証拠隠滅罪、証人等威迫罪などの罪や、改正組織的犯罪処罰法第七条の組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等の罪を重罰化することとしたことと平仄を合わせたものか。

十七 かつての政府案では、証人等買収罪の計画罪は、その対象犯罪ではなかったが、改正組織的犯罪処罰法第七条の二第二項の組織的な証人等買収罪は、計画罪の対象となっているということか。

十八 証人等買収罪は、未遂も予備も処罰されないが、組織的な証人等買収罪の計画罪は処罰されるということか。

十九 現行法上も、偽証等を教唆して、実際に偽証がされた場合には、当該教唆をした者も教唆犯として罰せられるが、改正組織的犯罪処罰法第七条の二の証人等買収罪は、偽証等の教唆の前段階で行う利益供与や、その申込みや約束を独立して罰するということになるのか。

二十 証人等買収罪に関し、偽証等の報酬として利益を供与し、またはその申し込みや約束をして、その後、実際に偽証等がなされた場合には、証人等買収罪としてではなく、偽証罪として処罰されることになるのか、それとも併合罪としてそれぞれ処罰されることになるのか。

二十一 証人等買収罪に関し、偽証等の教唆の前段階で行う利益供与や、その申し込みや約束を罰するというのは、処罰の前倒しということになるのか。

二十二 改正組織的犯罪処罰法に証人等買収罪を新設しなければならないという立法事実はあったのか。具体的に、証人等買収罪により罰しなければならない事態が多く発生しているのか。

二十三 証人等買収罪の新設は、国際組織犯罪防止条約第二十三条の「司法妨害の犯罪化」を国内法で整備しようとするものか。

二十四 国際組織犯罪防止条約第二十三条第一項の(a)は、「虚偽の証言をさせるために、又は証言すること若しくは証拠を提出することを妨害するために、暴行を加え、脅迫し若しくは威嚇し又は不当な利益を約束し、申し出若しくは供与すること」が故意に行われた場合に犯罪化することを求めているが、どうして、「暴行を加え、脅迫し若しくは威嚇し」という部分が改正組織的犯罪処罰法第七条の二には規定されていないのか。

二十五 国際組織犯罪防止条約を文言通り完全に国内法として実施することが国際組織犯罪防止条約の締結に不可欠であるというのが政府の立場だと考えられるが、国際組織犯罪防止条約における「司法妨害犯罪化」の規定が改正組織的犯罪処罰法で完全に具体化されておらず、政府の説明は一貫していないのではないか。

二十六 証人等買収罪の「報酬として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束」は、国際組織犯罪防止条約第二十三条の(a)における「不当な利益を約束し、申し出若しくは供与する」という部分に対応すると考えられるが、改正組織的犯罪処罰法の「報酬として」との文言は、国際組織犯罪防止条約の「不当な利益」という文言をより限定しているという理解でよいか。

二十七 証人等買収罪の「報酬として」とは、どういう意味か。

二十八 証人等買収罪について、法務省の林刑事局長は、衆議院法務委員会で「仮に弁護人が証人等に対して何らかの利益を提供したといたしましても、それがそういった偽証等をするについての報酬でない場合、本罪は成立しないわけでございます」と答弁しているが、利益を供与した場合に、それが報酬に当たるかどうかは、明確に区別できるのか。

二十九 例えば、弁護士が、喫茶店で証人等と打ち合わせる場合に、証人等の飲食代を支払ったとしても、当該飲食代の支払いは、改正組織的犯罪処罰法第七条の二にいう「報酬」にはならないということか。

三十 例えば、弁護士が、レストランで証人等と打ち合わせる場合に、証人等の食事代を支払ったとしても、当該食事代の支払いは、改正組織的犯罪処罰法第七条の二にいう「報酬」には当たらないのか。

三十一 例えば、弁護士が、遠方に住んでいる証人等を東京に呼ぶ際の交通費や、証人等が仕事を休んだ際の日当分相当の金員を支払った場合、当該交通費や日当分相当の金員の支払いは、改正組織的犯罪処罰法第七条の二にいう「報酬」には当たらないのか。

三十二 改正組織的犯罪処罰法第七条の二にいう「報酬」に当たるかどうかは、様々な事情を考慮して総合的に決めることになるのか。

三十三 改正組織的犯罪処罰法第七条の二第二項により、組織的な証人等買収が処罰対象とされたが、何が同条にいう「報酬」に当たるのかが曖昧であれば、その計画段階で計画罪が成立するかどうかについては、より曖昧で不明確になるのではないか。

三十四 改正組織的犯罪処罰法第七条の二のような規定ができると、弁護士が証人等と打ち合わせをすること自体に萎縮的な効果が発生して、被告人、弁護人の防御権の確保という観点からは問題があるのではないか。

右質問する。

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