国政報告

質問主意書・答弁書質問主意書・答弁書覧へ

質問主意書

質問第一九九号

無期懲役に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

平成三十年七月十九日

糸 数 慶 子

参議院議長 伊 達 忠 一 殿

無期懲役に関する質問主意書

無期刑受刑者は、改悛の状があるときは、刑の執行開始から十年が経過した後、行政官庁の処分によって仮釈放できると刑法第二十八条で定められているが、一九九〇年代後半以降、特に二〇〇〇年代に入ってから、無期刑受刑者の仮釈放者数が減り、刑務所内で死亡する人が増えており、無期刑の事実上の終身刑化が進んでいると考えられる。

更生保護法第一条は「犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに、恩赦の適正な運用を図るほか、犯罪予防の活動の促進等を行い、もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とする。」と規定している。終身刑的拘禁は、犯罪をした者及び非行のある少年の社会復帰を目指す更生保護法の目的に反するものである。

一九八〇年代以降、いわゆる新自由主義政策の中で社会が不安定化し、「体感治安の悪化」なるものがことさらに強調されるようになった。それに対処するためとして、刑事事件における重罰・重刑化が進んだ。

一九九八年六月十八日には、最高検察庁次長検事が「特に犯情悪質等の無期懲役刑確定者に対する刑の執行指揮及びそれらの者の仮出獄に対する検察官の意見をより適正にする方策について(依命通達)」(最高検検第八八七号。以下「最高検マル特無期通達」という。)を発出した。

最高検マル特無期通達は、まず「特に犯情等が悪質な者」を「マル特無期」に指定し、その者については「従来の慣行等にとらわれることなく、相当長期間にわたり服役させることに意を用いた権限行使等をすべきである」としている。そして、「仮出獄審査に関する刑務所長・地方更生保護委員会からの意見の照会(中略)に対する意見は、より適切で、説得力のあるものとする必要がある」と通達している。最高検マル特無期通達は、「マル特無期」に指定した受刑者を「終身又はそれに近い期間」服役させ、法律によらずに終身刑を導入するものであって、明確に違法かつ不当である。

二〇〇四年には、刑法の改正によって、有期懲役の最長期が三十年に延長された。これにより、無期刑受刑者の仮釈放はおおむね減少傾向となったほか、無期刑新仮釈放者の仮釈放時点における平均在所期間も大幅に長期化しており、二〇〇四年では二十五年十か月だったものが、二〇一六年には三十一年九か月に延びている。

二〇〇七年から二〇一六年の十年間において、無期刑新仮釈放者の総数が五十七人であったのに対し、死亡した無期刑受刑者は百七十六人に達している。実に、無期刑新仮釈放者の三倍強の数の無期刑受刑者が仮釈放されることなく死亡している(「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」二〇一七年十一月)。

このような事態の中で、二〇〇九年三月六日、法務省保護局長が「無期刑受刑者に係る仮釈放審理に関する事務の運用について(通達)」(法務省保観第一三四号。以下「法務省保護局長通達」という。)を発出した。

しかしながら、法務省が公表するデータを見ても、無期刑の終身刑化に変化があったとは到底考えられない。また、無期刑受刑者に係る仮釈放審理に関する事務の運用の実態はまったく明確になっていない。

よって、無期刑の終身刑化の実態と法務省保護局長通達の運用に関し、次の点について政府の責任ある回答を求める。

一 最高検マル特無期通達は、現在も有効なものとして運用されているか、明らかにされたい。

二 最高検マル特無期通達の不開示部分を含めた全文を公表されたい。

三 最高検マル特無期通達以降、これを補足・変更する新たな通達や命令は出されているか。出されている場合、その内容を公表されたい。

四 最高検マル特無期通達によって、「マル特無期」と指定された受刑者は今までに何人いるか、具体的な人数を明らかにされたい。

五 「マル特無期」と指定された受刑者に関して、刑務所長ないし地方更生保護委員会から意見の照会があったのは今まで何人であるか、年別、照会元別に明らかにされたい。

六 前記五の意見の照会があった際、仮釈放の可否についてどのような意見を述べたか、それぞれについて明らかにされたい。

七 前記五及び六の意見の照会の結果、仮釈放が認められた「マル特無期」受刑者は何人いるか、明らかにされたい。

八 法務省保護局長通達はいかなる目的をもって発せられたか、具体的に明らかにされたい。

九 法務省保護局長通達に基づき、仮釈放審理が開始された無期刑受刑者及び仮釈放が認められた無期刑受刑者は今まで何人いるか、年別、地方更生保護委員会別に明らかにされたい。

十 刑法第二十八条は、無期刑受刑者の仮釈放の条件を「十年を経過した後」と定めている。このことから明白なように、日本における無期懲役刑は終身刑ではなく、刑務所内での改善更生によって仮釈放されるべきであると考える。また、刑罰とは社会復帰が目的で、かかる刑事政策に基づいて仮釈放がされてきたと思うが、無期刑の終身刑化が進んだのは、刑事政策におけるいかなる変化によるものか、政府の見解を明らかにされたい。併せて、無期刑受刑者の仮釈放を積極的に進め、社会復帰を推進する刑事政策が求められていると考えるが、このことに対する政府の見解を明らかにされたい。

十一 無期刑受刑者も、仮釈放されるという希望があれば、改善更生の意欲が増し、社会に出て生きていく希望を持つことができるはずである。しかし、我が国における無期刑仮釈放者数は減少傾向にあり、一九九八年から二〇〇七年までの間の無期刑仮釈放者数は延べ百四人(無期刑新仮釈放者は合計七十九人)であったのが、二〇〇七年から二〇一六年までの当該数は延べ七十六人(無期刑新仮釈放者数は合計五十七人)となっている。このように無期刑受刑者の仮釈放が減ってきたのはなぜか、理由を明らかにされたい。

十二 仮釈放審理の公平性、的確性、透明性を高めるために、法務省として何を行ってきたのか、具体的に明らかにされたい。

十三 他国と比較しても、我が国の無期刑受刑者の仮釈放の実態は際立って苛酷である。例えば、ドイツでは、最高刑が終身刑だが、原則として十五年服役後に仮釈放となる。フランスでは、服役から十五年を経過すると、受刑者により仮釈放の申請が可能となり、仮釈放者の平均服役期間は十九・五年である。フィンランドでは、無期刑受刑者も十二年を経過すると順次仮釈放となり、平均服役期間は十四年で、無期刑受刑者の服役期間が二十年を超えることはない。これら他国の状況を踏まえると、我が国の無期刑の事実上の終身刑化ともいえる仮釈放状況は、憲法第十三条、自由権規約第七条、第九条第一項に違反すると考えるが、これに対する政府の見解を明らかにされたい。

右質問する。

この質問の答弁書を見る