国政報告

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再犯防止を推進する法律案、部落差別解消法案、大阪府警機動隊員による「土人」発言

第192回国会 2016年12月1日 法務委員会

糸数慶子君

沖縄の風の糸数慶子です。

部落差別の解消の推進に関する法律案についてお伺いいたします。

まず、部落差別の実態調査についてですが、法案の第六条で、国が、部落差別の解消に関する施策の実施に資するため、地方公共団体の協力を得て、部落差別の実態について調査することが盛り込まれました。当事者団体からは、どのように調査が行われるのか懸念する声が上がっております。衆議院法務委員会でも、またこの委員会でもこの実態調査については度々質問がされておりますが、改めて伺います。

この調査は、差別される側の意見を十分に反映して行われるべきだと考えますが、どのように行う予定なのか、伺います。

衆議院議員(宮崎政久君)

お答え申し上げます。

まず、委員御指摘の差別される側の意見を反映する、すなわち、当然、調査によって新たな差別を生み出すことがあってはならないというような御趣旨と理解しておりますけれども、そのようなことがあってはならないということは、繰り返し申し上げておりますとおり、この発議者も同じ認識でいるものでございます。

そして、この法案全体の構成というんでしょうか、この調査の項目も含めまして少し敷衍をして御説明をさせていただきますと、例えば旧同和三法というものがありましたが、これは差別を受けてきた方々やその地域を対象として生活環境の改善などのために財政支出を伴う事業等を行うというようなことでございました。本法案は、国民全体を対象として、部落差別の解消の必要性に対する国民一人一人の理解を深めるように努めることによって、部落差別が発生しないように社会的な意識を確立するということを目的としているものであります。

施策の対象であったりその内容もこのような形で違うわけでありますが、こういう趣旨からいたしまして、差別を受けてきた方々であるとかその地域を対象としたものというものは旧同和三法が主眼としてきたものでありますが、今私たちが必要だと考えているのは、国民全体を対象として部落差別が発生しないような社会的意識の確立を目指すこと、それであるがゆえに、この法案の第二条には基本理念を定めまして、この基本理念の中では、この法案における施策としては、全ての国民が等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとって、部落差別を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるように努めることにより、部落差別のない社会を実現することを旨として行わなければならないということを、この第六条の施策にも当然掛かるもの、基本理念として定めているところでございます。

でありますので、この文言にもございますとおり、部落差別の解消に関する施策の実施に資するための調査を行うものでありまして、部落差別を受けた人や地域を個別に掘り出して公表するような形式のものであってはならず、また新たな差別を生むような方法による調査はこの法案の理念に反するものであるということを申し添えたいと思っております。

以上です。

糸数慶子君

次に、戸籍の不正取得についてでありますが、戸籍情報を不正に入手して差別事件になった事案を全て調査し、責任者を処罰するよう国連から勧告をされております。不正取得防止目的で二〇〇八年に戸籍法が改正され、本人確認を始め使用目的を厳しくチェックすることになりました。しかし、その後もプライム総合法務事務所事件が発覚し、膨大な戸籍情報が不正入手されたことが明らかになりました。さらに、闇の情報屋と呼ばれる調査会社の存在も明らかになりましたが、差別事件を調査すれば、あらゆる手段を用いて出自を明らかにする戸籍情報を入手しようとする実態が分かります。

戸籍情報が電子情報化され、瞬時に情報入手が可能となりました。電子化された戸籍情報もまた個人情報保護法の下で管理することが求められています。しかし、戸籍情報は個人情報保護法の適用除外とされているために不正取得が後を絶ちません。本人の同意なくして第三者に提供しないとの原則を戸籍情報にも適用すべきだと考えます。

そこで伺いますが、この法案が成立すれば不正取得はなくなるのでしょうか、お伺いいたします。

衆議院議員(宮崎政久君)

委員御指摘のプライム事件、社会的にも非常に批判を浴びた戸籍の不当な手段による取得、しかも大規模な事件であったわけであります。

戸籍を不当な手段で取得する行為が、当然ですが、これ許されるものでないということにつきましては、発議者も委員と認識を共有しているものだというところでございます。そして、本法案は理念法でございまして、特定の行為に対する禁止行為であるとか罰則規定などをこの法案において定めているというわけではございませんので、不正取得をなくせるかという御質問であるとしましたら、それは戸籍法等の法令違反に該当する場合に処罰の対象になるという形で対処をしていくものと理解しているということになります。

ただ、この法案は戸籍の不正取得というものを直接規制しているわけではないわけでありますけれども、部落差別の解消に関する施策の推進を図りまして部落差別の解消を図って、こういう事件があったような、そもそも部落の出身者であることを調査する目的で戸籍を取得するような行為が行われることがないような社会を目指しているというものでありまして、この法案、理念法によって、最終的には、第一条の目的に記載をしているわけでありますけれども、第一条の末尾にありますが、部落差別の解消を推進して、もって部落差別のない社会を実現することを目的としているものでありまして、このような不正取得、要は部落出身者であることを調査することを目的とするような調査をしようというようなことが起きない社会を目指しているというふうに御理解いただければと思っております。

糸数慶子君

この法案の趣旨がしっかり国民に理解されて、不正取得がなくなるということを期待をしていきたいと思います。

また、部落差別の撤廃については、これまで国連の人種差別撤廃委員会を始め各人権委員会から度々勧告をされております。私も出席いたしましたが、今年の二月にジュネーブで行われた女性差別撤廃条約第七回、第八回日本政府報告書審査では、部落を含めたマイノリティー女性への複合的、交差的差別が続いていることについて懸念が示されました。差別禁止の法制定や、偏見を根絶するための監視と評価を行うことが勧告され、フォローアップの対象にもなっているということは申し添えておきたいと思います。

先ほど、小川委員に対する外務省の答弁で、国連からの勧告には法的拘束力はないという答弁がありました。それは了解しておりますけれども、条約加盟国には条約実施義務があり、憲法九十八条二項でも、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」というふうに規定しています。つまり、締約国は、条約実施のためにその状況について数年ごとに報告書を提出することが義務付けられており、その報告書審査で勧告されればそれに従うことは当然で、締約国の責務であるというふうに思います。法的拘束力がないという答弁がありましたけれども、それは開き直りと誤解されることのないよう、条約実施のために勧告には従うという積極的な姿勢を示していただきたいというふうに思います。

それから、次の質問ですが、これは差別という点では沖縄県民に対する土人発言についても根っこは一緒だと思いますので、お伺いをしたいと思います。

十一月二十五日の衆議院法務委員会におきまして、警備中の警察官が国民に対して土人というような発言を行った場合、一般論としてどう考えるかという委員の質問に対し、法務省人権擁護局長は、不当な差別的言動はいかなる者に対してもあってはならず、人権擁護上問題があるというふうに答弁されました。この発言は差別的言動に当たり得ることは否定できないというふうに答弁されているわけです。金田法務大臣も同様の見解である旨が答弁されたわけです。けれども、他方、鶴保沖縄担当大臣は機動隊員による発言を差別と断定できないと発言し、政府もまた差別と断定できないという鶴保大臣の発言を容認する答弁をしています。

そこで、改めてこの問題について伺いますが、政府は、発言を人権問題と捉えるかどうかについては言われた側の感情を主軸に置いて判断すべきとの見解を既に示しておりますが、土人と言われた芥川賞作家の目取真俊さんは、この発言を、見下しており、沖縄に対する侮蔑だと見解を述べています。

土人とは未開の土着人を指します。この言葉だけでも人に対して使うことは差別的ではばかられる状況だと私は思いますけれども、大阪府警の機動隊員は土人発言の直前に、触るなくそ、どこつかんどんじゃ、ぼけという侮蔑的な発言を行っています。この一連の発言を差別と断定するのは容易なことだと思いますが、差別と断定できないのか、改めて政府参考人にお伺いいたします。

政府参考人(萩本修君)

御指摘のありました沖縄における警察官による発言につきましては、政府としまして、相手方を極めて不快にさせ、警察の信用を失墜させるような不適切なものであると、まず答弁しているものと承知をしております。その一方で、指摘がありましたとおり、その発言につきまして、差別と断定することはできないとも答弁しているというように承知をしております。

なぜ断定できないかという理由は説明されていないわけでして、私の理解するところということになってしまいますけれども、土人という言葉、今委員からも御指摘がありましたとおりの意味のほか、国語辞典などを引きますと複数の意味が紹介されているところでして、具体的な場面においてどのような意味合いで用いられているかについて一義的に述べることは困難という側面があろうかと思います。また、その具体的な発言そのものが差別に当たるかどうかにつきましては、その発言がされるに至った経緯、その際の具体的状況等によるという面もあろうかと思います。そうしたことから、御指摘の発言を差別と断定することはできないというように説明しているものと理解をしております。

いずれにしましても、御指摘の警察官の発言が不適切であり、また大変残念で許すまじきものであることは、これまで国会審議の場等々で繰り返し政府の関係者から答弁されているとおりと受け止めております。

糸数慶子君

部落発言も、この部落に対する差別、それからこの沖縄県民への土人という発言も、これ沖縄県民への差別も、私、同根だというふうに思います。とんでもない発言であるにもかかわらず、これ、差別的言動といったものが差別に当たらないと主張しても、言われた側が差別であると受け止めればそれは差別に当たるわけです。

今のお答えの中に、複数、辞典の中にあるというふうにおっしゃっておりますけれども、やはりこの提案されております法案も、長年差別を受けた側が差別をやめてほしいというその願いから生まれたものだというふうに思うわけですが、この沖縄の歴史的な現実を考えていきますと、これまで七十年以上も本当に本土から切り離されて、しかも県民の思いというのが、ことごとくこれまでの沖縄の選挙でも示されてまいりましたように、民意というのは新たな基地を造ってほしくないという、その中での県民の運動の延長線でこういうことを発言されたわけです。それ私、本当に差別をした発言だと思うわけですけれども。

今日はこの場に発議者として宮崎議員もいらっしゃいます。沖縄の議員として、この今の発言に対して一言御感想を求めたいと思います。どのように受け止められていらっしゃいますでしょうか。

衆議院議員(宮崎政久君)

この法案との関係で申しますれば、この法案、これまでの様々な質疑、この法案の提出に至るまでの各党における様々な関係される皆様からのいろんな事情を聞かせていただいたこと、歴史を学び、そういったことを踏まえて今回この法案の提出に至ったものであります。例えば、旧同和三法で築き上げられてきた例えば生活環境の改善などについての成果があることもしっかりと踏まえた上で国民意識を、部落差別は許されないものだという意味での国民意識をしっかりと確立をしていく必要があるという趣旨であります。沖縄に関することも、長い歴史の中で様々培われたことを一つ一つ実現をしていかないといけないという趣旨であれば全く同じことであります。

私自身の様々な感情はありますけれども、ここは法案を質疑する場でありますし、また、政府の関係者の発言に対する評価等にわたることは私がこの場で答えるのは適切でないと思いますので、発言を控えさせていただきます。

糸数慶子君

残念でございます。今、私は、この土人発言に対する直接の宮崎議員の思いをお伺いしたいと思いまして質問したわけでございますが、先ほど提案がありましたように、国民一人一人の理解を得てこの法案を成立をさせていく、そして、そういう意味では差別ということを、部落の差別も沖縄県民への差別というのも同根ではないかということを私申し上げたわけです。で、それに対する思いはいかがですかと。沖縄担当大臣である鶴保大臣がああいうふうな発言をされておりますけれども、それに対して全く沖縄の立場からお話ができないというのは本当に残念であります。

この法案も、長年差別を受け続けた側が差別をやめてほしいという願いから生まれたものだというふうに思うわけで、沖縄での、先ほどから申し上げております基地に対する反対の、そういう立場から運動している人たちの人権というのは、国民の一人として当然受け入れられるべきだというふうに思っております。そういう意味での差別の発言であるということをはっきり宮崎議員の口からここでお伺いしたかったわけですけれども、個人の感情は別としてということでございましたので、あえてこれ以上追及いたしませんけれども。

やはり、こういう法案も、長年差別を受けた側が差別をやめてほしいという願いから生まれたものだというふうに思います。部落差別が一日も早く解消されることを願いまして、私の質問を終わりたいと思います。

終わります。