国政報告

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法曹養成制度の課題

第193回国会 2017年4月18日 法務委員会

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。

今回の改正案については、司法修習生に対して月額十三万五千円の給付金を支給する制度の新設、一定の要件の下に住居費用や移転の費用の支給、貸与額を見直した上で現行の貸与制の存続など、修習生の負担減となるため、もちろん賛成であります。しかしながら、これまで多くの方が指摘されていますように、法曹養成制度には多くの課題があるということも幾つか指摘をしておきたいというふうに思います。

まず、配付をいたしました法務委員会調査室作成の資料を御覧いただきたいと思います。

これは、新制度となった二〇一〇年、それから二〇一六年までの司法修習資金の貸与申請者数と申請額別の内訳及び貸与率の一覧であります。初年度の二〇一〇年ですが、貸与申請後に延期されたため実際には二〇一一年から貸与が行われております。司法修習生の総数のうち申請しなかった方については、この数字だけでは読み取ることができませんが、貸与の必要がなかった方だけではありません。保証人が見付からずに貸与申請ができなかった方、その中には親や親戚あるいは金融機関などから借りる方もいらっしゃるのではないかというふうに思います。

そこで、最高裁にお伺いいたしますが、この貸与の保証人となるための要件はあるのでしょうか。

最高裁判所長官代理者(笠井之彦君)

お答え申し上げます。

保証人の要件でございますけれども、原則として年収百五十万円以上又は資産額三百万円以上の方となります。そのような方であれば、どなたでも差し支えないということでございます。

糸数慶子君

ただいま御答弁がありましたように、これは、借りる側にとっての要件は、つまりこのハードルが低いということだと思います。しかし、この貸与申請率を見ていただくと、八七・四九%となっております。延期されたので実際には二〇一一年ですが、八四・三六%であったものが二〇一六年には六四・七七%と、二〇%も減っておりますが、この要因は把握されているのでしょうか。

最高裁判所長官代理者(笠井之彦君)

お答え申し上げます。

貸与につきましては、修習生から貸与申請がありました場合に原則として貸与決定をしております。貸与を申請するかどうかは修習生各自の判断に委ねられているということでございまして、最高裁として貸与金の申請率の低下の原因が具体的にどういうものであるかということについては把握はしておりません。

糸数慶子君

把握されていないということですが、せっかくつくった制度が生かされないということは、貸与制度あるいはほかにも問題があるということだというふうに思います。なぜ貸与率が低くなったのか、その要因を把握しておくべきだというふうに指摘しておきます。

次に、司法試験の出願者数について伺います。

今年の司法試験の出願者数は何人でしょうか、法務省に伺います。

政府参考人(小山太士君)

お答えをいたします。

平成二十九年司法試験の出願者数は六千七百十六人でございます。

糸数慶子君

余りの少なさに驚くわけですが、それでは、二〇〇六年以降の出願者数の推移を法務省にお尋ねをいたします。

政府参考人(小山太士君)

お答えを申し上げます。

まず二〇〇六年、平成十八年でございますが、この当時は新旧の司法試験がございまして、新司法試験が二千百三十七人、旧司法試験が三万五千七百八十二人、合計三万七千九百十九人でございました。平成十九年は、新司法試験が五千四百一人、旧司法試験が二万八千十六人、合計三万三千四百十七人でございます。平成二十年は、新司法試験七千八百四十二人、旧司法試験二万一千九百九十四人、合計二万九千八百三十六人でございます。平成二十一年は、新司法試験九千七百三十四人、旧司法試験一万八千六百十一人、合計二万八千三百四十五人でございます。平成二十二年は、新司法試験一万一千百二十七人、旧司法試験一万六千八十八人、合計二万七千二百十五人でございます。平成二十三年は、新司法試験一万一千八百九十一人、旧司法試験六人、合計一万一千八百九十七人。続きまして、平成二十四年は、この以降は新だけでございますが、新司法試験一万一千二百六十五人、平成二十五年は一万三百十五人、平成二十六年は九千二百五十五人、平成二十七年は九千七十二人、平成二十八年は七千七百三十人となっております。

糸数慶子君

二〇〇三年度は五万人を超えていたというわけですが、今、年々減少し、今年は六千七百十六人ということで、これは大変危機的な状況と言えるのではないでしょうか。  法曹出願者数の減少の主な要因は過重な経済的な負担と法科大学院の合格率の低さだと指摘されておりますが、法務省はどのように認識されているのでしょうか。

政府参考人(小山太士君)

お答えをいたします。

法曹志望者数の減少につきましては、一昨年六月の法曹養成制度改革推進会議決定におきまして、法科大学院全体としての司法試験合格率や、弁護士を含む法曹有資格者の活動の場の広がりなどが、制度創設当初に期待されていた状況と異なるものとなっているといった事情が指摘されているところでございます。また、昨年九月に法務省が文部科学省と共同で実施した法学部生に対する法曹志望に関するアンケートにおいては、法曹志望に当たっての不安として、法科大学院や司法修習における経済的負担等が挙げられているところでございます。

法務省といたしましては、法曹志望者の減少につきましては、これら複数の要因が影響しているものと考えているところでございます。

以上です。

糸数慶子君

まず、制度設計をするには、やはりこれは増えることを前提に議論がされていたわけですから、大幅に減少したということは、厳しい言い方をいたしましたならば、これはもう失敗だということだというふうに思います。

そこで、文科省にお伺いいたします。

過重な経済的負担と法科大学院の合格率の低さなどで法曹を目指す方が減少し、法科大学院の多くが募集停止となっております。これは様々な取組をなされているということは承知しておりますが、規模の適正化に向けた文科省の取組についてお伺いをいたします。

政府参考人(浅田和伸君)

文部科学省では、平成二十四年度の予算から、公的支援の見直しを通じて各法科大学院の自主的な組織見直しを促してきたところですが、平成二十七年度予算からは、公的支援見直し強化・加算プログラムとして、組織見直しだけでなく、各法科大学院の先導的な取組の支援による教育力の向上にも取り組んでおります。

この結果、平成二十九年度の法科大学院全体の入学定員の見込みは二千五百六十六人と、法曹養成制度改革推進会議決定を踏まえて設定した目標である二千五百人をほぼ達成する見込みとなっており、文部科学省としては引き続き公的支援の見直しなどを通じて法科大学院教育の充実に取り組んでまいります。

糸数慶子君

法曹養成制度改革は、これは二〇〇一年の司法制度改革審議会の提言に基づいて、実働法曹人口五万人規模、そして司法試験の合格者数を二〇一〇年には年間三千人程度とするという方針に基づいて進められてきております。財政制度審議会で給費制が批判され、法曹関係者の反対にもかかわらず、財政面重視で議論した結果、このようになったとも言えるわけです。

国民の税金で法律家を育てるという視点が大切であり、これは長期的に見て税金を投入することに国民の理解は得られるというふうに思います。

例えば、今福岡と熊本の弁護士会で熊本地震災害女性電話相談が行われておりますが、今私の手元にこのようなチラシもあるわけでございますが、実際に今各地で貢献をされている弁護士さんもたくさんいらっしゃいます。また、刑事事件では国選弁護人を引き受ける方々も多くいらっしゃるわけです。そういう弁護士の方々は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命として、ほぼ手弁当で頑張っておられます。そして、その職務を誠実に行うことで社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力されているわけで、そういう方々の社会貢献というのは計り知れないというふうに思います。

そこで、日本司法支援センター、いわゆる法テラスですが、この法テラスの常勤弁護士として刑事国選弁護だけを担う弁護士生活を十年以上続けていらっしゃる弁護士の村木一郎さんは、この国の憲法は、公権力による身体拘束を受けるに際し、弁護人依頼権を保障し、刑事被告人についても弁護人依頼権を保障するとともに、自ら信頼できない場合には国が弁護人を付することとしています。そして、刑事訴訟法はそのような弁護人依頼権を実質的に保障するために被疑者について国選弁護人制度を設けています。現実には、身体拘束を受ける市民の多くは自ら費用負担をして私選弁護人を選任することが経済的に難しく、国選弁護人が選任されるケースが多いです。現在、全国の弁護士会に所属する多くの弁護士は、必ずしも十分な報酬を得られないことを承知の上で、被疑者、被告人の国選弁護人に積極的に就任しています。そして、日々、被疑者、被告人の権利擁護に努めています。それは、弁護士法第一条が定める基本的人権の擁護が弁護士の基本的な使命であることを自覚しているからです。つまり、経済的視点より公益的視点を優先していることを意味しています。そのような法曹を養成する段階では十分な国費を投入することがまずもって求められています。村木弁護士はこのように述べていらっしゃいます。

このような弁護士の活動や国が法律家を育てるという考え方について、金田大臣の御見解をお伺いいたします。

国務大臣(金田勝年君)

糸数委員の指摘に対しましては、例えば社会貢献や公益的視点の重要性についてお述べになりましたが、私も、非常にそれは国がしっかりと法曹養成に取り組んでいくことが重要だという観点から、同じ思いを持つものであります。

多くの有為な人材が法曹を志望して質の高い法曹が活躍するようになるというのがよろしいわけですけれども、そのためにも国がしっかりと法曹養成に取り組んでいくということ、これも重要であると、このように認識していることを改めて申し上げます。

一昨年六月の法曹養成制度改革推進会議決定におきましては、法曹有資格者の活動領域の拡大、それから法科大学院改革、そして司法試験の在り方、それから司法修習生に対する経済的支援について検討することとされたところでありました。法務省としては、この推進会議決定のほかに、昨年の骨太の方針におきましても法曹人材確保の充実強化を推進することがうたわれましたことを受けて、法曹人材確保の充実そして強化の推進等を図るために修習給付金制度を創設することとしたところなのであります。

法務省としましては、推進会議決定に掲げられました取組について、文部科学省その他の日弁連等の関係機関や団体と協力をしながら、有為な法曹人材の確保に向けた取組を今後とも進めてまいりたいと、このように考えている次第であります。

糸数慶子君

次に、先ほどから何度も出ておりましたけれども、改めてお伺いしたいと思いますが、この制度のはざまで給付を受けられない方について何らかの配慮が必要ではないでしょうか。改めてお伺いいたします。

国務大臣(金田勝年君)

先ほどから何度も出ていますがという御指摘の谷間の問題ですね。これにつきましては、修習給付金制度の趣旨というのは、法曹志望者が大幅に減少している中で、昨年六月の骨太の方針で言及されました法曹人材確保の充実強化の推進等を図るという点にあるわけであります。この趣旨からいたしますと、修習給付金について、今後新たに司法修習生として採用される方を対象とすれば足りるものと考えておりまして、現行貸与制下の司法修習生をも対象とする必要性という点ではどうかと考えるわけであります。

加えて、仮に何らかの措置を実施するといたしました場合にも、現行貸与制下において貸与を受けていない方々との取扱いをどうするかという制度設計上の困難な問題がありますほか、そもそも既に修習を終えている者に対して事後的な救済措置を実施することについて国民的理解が得られるかどうかという、そういう問題もあろうかと思うわけであります。

したがいまして、修習給付金制度の導入に伴いまして、現行貸与制下の司法修習生に対します救済措置を設けることは予定をいたしておりません。

糸数慶子君

この点については、政府が進めてきた結果ですから、もう少し当事者に寄り添っていただきたいというふうに思います。

授業料だけで百万円、そして法学未修者の方は三年、既修者であれば二年掛かるわけですが、これで授業料が三百万円、そのほかに生活費等で、これ終了時には数百万円の借金を抱えることになるわけです。やはり、公正でそして公平な社会を目指していく、そういう職務を遂行する法律家の皆さんが法曹養成制度改革の失敗で不公平な取扱いを受けるというのは、余りにも酷ではないでしょうか。多くの借金を抱えている方がいらっしゃる一方でこの給付金制度を創設することに、立法府にいる議員の一人として大変申し訳なく、じくじたる思いをいたしております。

これまで司法試験に合格した後の話をしてきたわけですが、合格できなかった方のことについてもお話をさせていただきたいと思います。

法科大学院に行けば七、八割が合格できるということで、政策秘書だった方が退職をして法科大学院に行かれたケースです。司法試験に三度不合格となり、当時、更に受験するには再度法科大学院に行かなければならないということで法律家を断念された方がいらっしゃいます。合格できなかった方は本人の力量という、そういう見方もありますけれども、その方は政策秘書試験に合格し、すばらしい仕事をされてきた方であるわけですから、国による詐欺に遭ったみたいだとその方がおっしゃっていらっしゃることがとても印象的でした。

受験者が減ったのは、仕事を辞めて収入が途絶えるリスクを背負ってまで合格率の低い法科大学院に行くことを選択しなくなったということではないかというふうに思います。支援を求めると、法務省は国民の理解が得られないなどというふうにおっしゃるわけですけど、これは支援のために税金を投入することに国民の理解が得られないのではなく、むしろ法曹養成制度改革の失敗で国の制度の見直しによる税金の無駄遣いこそ国民の理解が得られないということを申し上げまして、ちょっと時間はありますけれども、私の質問は終わりたいと思います。

ありがとうございました。