国政報告

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民法(債権) 沖縄本土復帰45年について抗議、賃貸借、約款

第193回国会 2017年5月16日 法務委員会

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。よろしくお願いいたします。

沖縄県は昨日の五月十五日に復帰四十五年目を迎えました。米軍基地の即時無条件全面返還、平和な島沖縄を期待していた沖縄県民の願いは、かなうどころか、日米安保の下、米軍基地の七割が沖縄県に集中し、その機能は縮小どころか更に強化、拡大されております。復帰で手にしたはずの憲法ですが、主権在民、基本的人権の尊重、平和主義という基本原則さえ沖縄県民は実感できずにいます。さらに、法の下の平等、表現の自由、生存権も脅かされております。沖縄への偏見や差別が取り除かれ、県民が憲法で保障された権利を実感することこそが真の復帰であるということを申し上げて、質問に入りたいと思います。

これまでのこの質疑の中で重なる部分もありますが、確認の意味でも改めて伺いたいと思います。

九日に質問できなかった賃貸借について、まず冒頭に質問いたします。

今回の改正で賃貸借の存続期間が二十年から五十年へと大幅に延長されました。この趣旨及び想定される適用場面、影響についてまずお伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

現行法の六百四条は賃貸借の存続期間の上限を二十年と定めておりまして、当事者の合意があってもそれより長い期間の賃貸借契約をすることはできないこととされております。これは、存続期間が長期である賃貸借を一般的に認めてしまうと賃貸物の損傷や劣化が顧みられない状況が生じ、国民経済上の問題があるとの趣旨に基づくものというふうに説明されております。

しかし、現代社会におきましては、存続期間を二十年以上とする現実的なニーズがあり、当事者間で合意ができるものであるにもかかわらず、この規定が障害となって存続期間を二十年とする賃貸借契約を締結せざるを得ず、二十年の経過後に改めて再契約をするという不安定な契約実務を強いられているとの指摘がされております。

そこで、改正法案におきましては、物件である永小作権の存続期間の上限が五十年と定められていることとの均衡なども考慮いたしまして、賃貸借の存続期間の上限を五十年に伸長するということとしております。

現代社会におきましては、存続期間を二十年以上とする現実的なニーズがある場面としては、例えばこれはゴルフ場の敷地に利用するための土地の賃貸借などについて、現行法の下では存続期間を二十年とする賃貸借契約を締結せざるを得ないわけですが、二十年経過後改めて再契約をすることができるかについては確かではない部分が残りますため不安定な契約実務を強いられているとの指摘がされておりました。そこで、このような極めて長期間の土地利用を前提とした取引が念頭に置かれていたものでございます。ゴルフ場の例のほかにも、例えば太陽光発電などの分野でも同様のニーズがあるという指摘がございました。

改正法案によりまして、当事者が合意をしているにもかかわらず二十年の経過後に改めて再契約をするほかないという現状については改善が図られるものと考えられまして、その点が大きな効果であるというふうに考えております。

糸数慶子君

また、今回の改正では今まで規定のなかった敷金に関する規定が設けられることとなりました。敷金に関する規定が新設された理由についてお伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

建物などの賃貸借におきましては、賃借人が敷金を交付することが多く見られるわけですが、現行法上は敷金それ自体に言及する規定は何か所かございますが、敷金の定義ですとか敷金返還債務の発生時期や返還すべき金額など、敷金に関する基本的な規律を定めた規定は設けられておりません。しかし、敷金の返還をめぐる紛争は、これは日常的に極めて多数生じている一方で、この種の紛争に関しましては既に安定した判例なども形成されております。そこで、改正法案におきましては、敷金の定義や基本的な規律についてその明文化を図ることとしたものであります。

改正法案における敷金に関する規定の概要を申し上げますと、まず敷金の定義を設けております。改正法案におきましては、敷金の定義として、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。」と定めております。

それから、敷金返還債務がいつ発生するかという発生時期の問題につきましては、これは判例に従いまして、賃貸借が終了して目的物が返還されたときに敷金返還債務が生じますとともに、賃借人が適法に賃借権を譲渡したときもその時点で敷金返還債務が生ずるものとしております。

さらに、返還すべき敷金の額につきましても、判例に従いまして、賃貸物の返還完了のときに、受け取った敷金の額からそれまでに生じた被担保債権の額を控除し、なお残額がある場合に、その残額につき発生するものとしております。

このほか、賃貸不動産の譲渡に伴い賃貸人たる地位が不動産の譲受人に移転した場合における賃借人に対する敷金返還債務の承継に関しまして、これも判例に従いまして、敷金返還債務も譲受人に承継されることとしております。

このように敷金について明文の規定を設けますことで基本的な判断の枠組みが明瞭なものとなり、実際に生ずることの多い賃貸借契約終了時の紛争についてそれを予防するという効果、それと、その適正迅速な解決に資するという効果を期待することができるものと考えております。

糸数慶子君

今回の改正では、賃貸借契約終了時における原状回復義務に関する規定も設けられました。これは、現行法では第六百十六条で第五百九十八条を準用していたものを新たに規定したものです。この改正の趣旨及び影響についてお伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

賃貸借契約における原状回復義務は、これは賃借人の負う基本的な義務であります上に、原状回復義務の範囲をめぐって実務的に紛争が生じるといったことも多いことから、民法を国民一般に分かりやすいものとするため、改正法案では原状回復義務について明文の規定を設けることとしております。

具体的な内容でございますが、まず賃借人が賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷につきましては賃借人が原状回復義務を負うという原則を定めますとともに、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗やその経年変化は原状回復義務を負う損傷には含まれないこと、また、賃借物の損傷が賃借人の帰責事由によらないものである場合には原状回復義務を負わないことを明文化することとしております。これが改正法案の六百二十一条でございます。

このように原状回復義務について明文の規定を設けることには、実際に賃貸借契約終了時の紛争が少なくないことにも照らすと、これは無用な紛争を予防する効果があるとともに、紛争が生じた場合の判断の枠組みが明らかになりまして、紛争解決にも資するものと考えるところでございます。

糸数慶子君

次に、賃貸借契約終了時の原状回復義務の規定の改正により紛争の減少が予想されますが、この規定は任意規定であるというふうに解されています。任意規定であるということは、当事者間で規定とは別の合意をすればそのルールに従うということになり、賃借人保護が図られないおそれがあるわけです。

実際に、退去時の室内の清掃費用を賃借人が負担する旨を定めるいわゆるクリーニング特約が問題となるケースが少なくありません。今回の法改正によっても、クリーニング特約のような条項が契約の内容となっている場合は、賃借人は退去時の清掃費用を負担しなくてはならないのでしょうか。

政府参考人(小川秀樹君)

改正法案におきましては、賃貸借契約終了時の原状回復義務につきまして、賃借人が賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷については賃借人が原状回復義務を負うという原則を定めますとともに、いわゆる通常損耗ですとか経年変化につきましては原状回復義務を負う損傷には含まれないことを明文化することとしておりますが、この規定は御指摘がありましたように任意規定ということでありまして、当事者間でこれと異なる特約を定めることを妨げるものではございません。

そこで、御指摘がありましたクリーニング特約の取扱いということになりますが、お尋ねがありましたクリーニング特約には様々なものがあると考えられますが、これに関して判例は、通常損耗や経年変化は原状回復義務を負う損傷には含まれないことを前提として、通常損耗について賃借人に原状回復義務が認められるためには賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているなどの事情がなければならないとしておりまして、この判例に照らせば、クリーニング特約の効力が一律に認められるということにはならないものと解されるところでございます。改正法案はこのような判例の判断の前提となるルールを明文化するものでありまして、当然ながら、この判例自体も改正法案の下で維持されることを前提としております。

以上でございます。

糸数慶子君

改めて伺いますが、結局は、このクリーニング特約では、やはり賃借人は退去時のその清掃費用を負担するということなんでしょうか、負担しなくてはならないということなんでしょうか。

政府参考人(小川秀樹君)

先ほども申し上げましたように、判例によれば、単にクリーニング費用を負担する旨の条項があっても、その文言が具体性を欠くなどして効力が否定され得るものであるが、今回の改正はその前提となるルールを明文化するものでございます。

したがいまして、このような規定を設けるということによって、クリーニング特約に関する紛争の解決に当たっても一定の意義があるものというふうに考えているところでございます。

糸数慶子君

それでは、この賃貸借契約終了時の原状回復義務に関する規定は、クリーニング特約に関する紛争についてこれを解決する手段とはならないのではないですか。

政府参考人(小川秀樹君)

いわゆるクリーニング特約は幅が広うございますので、クリーニング特約そのものに対して直接的に効果を生じさせるというものではございませんが、前提となる枠組みについて明確化したものということでございます。

糸数慶子君

次に、約款についてお尋ねをしたいと思います。

今回、民法に新たに約款に関する規定が設けられることになりました。規定の趣旨及び概要について改めて御説明お願いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

現代社会におきましては、大量の取引を迅速かつ安定的に行うために契約に際して約款を用いることが必要不可欠となっていると考えられるわけですが、約款に関する民法の規定は特にございません。

民法の原則によれば、契約の当事者は契約の内容を認識して意思表示をしなければ契約に拘束されないと解されておりますが、約款を用いた取引をする多くの顧客は、そこに記載された個別の条項を認識さえしていないため、なぜ約款の中の個別の条項に当事者が拘束されるのかといった点も必ずしも明らかではございません。また、約款を利用して継続的な契約が締結される場合などには、契約の内容を約款準備者が一方的に変更することが現実に行われておりますが、これも契約の相手方の同意なく可能であるかは不明瞭でございます。

以上申し上げましたような問題状況を踏まえまして、改正法案におきましては、約款を用いた取引の法的安定性を確保するため、民法に定型約款に関する規定を設けることとしております。これによりまして、定型約款の中の個別の条項の拘束力の有無ですとか定型約款の変更の可否に関する紛争など、定型約款に関連する紛争について適切な解決の枠組みが示され、紛争の未然防止にも役立つことが期待されるところでございます。

規定の概要ということですが、改正法案では、定型約款に関する基本的な規律として、定型約款の定義、定型約款による契約の成立、定型約款の変更などについて規定を設けております。

まず、定義の点でございますが、「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」、これを定型取引と定義いたしました上、「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」を定型約款と、こういう定義をしております。

次に、定型約款による契約の成立でございますが、定型約款を利用して契約を成立させる場合のルールとして、定型約款を契約の内容とする旨の合意をし、又は定型約款準備者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示した場合において、契約の当事者においてその定型約款を利用した個別具体的な取引を行う旨の合意がされましたときは、定型約款に記載された個別の内容について認識していなくても定型約款の個別の条項について合意をしたものとみなす旨の規定を設けております。これが五百四十八条の二の第一項一号、二号でございます。

それから、定型約款が変更される場合についても規定を設けておりまして、まず相手方の一般の利益に適合するとき、それから、定型約款の変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る諸事情に照らして合理的であると認められるときには、定型約款準備者は相手方の個別の同意を得なくても一方的に定型約款の変更をすることができると、これを定めておるところでございます。

糸数慶子君

定型約款の個別の条項が契約内容となるための要件、いわゆる組入れ要件について、第五百四十八条の二第一項第二号では、定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときも個別の条項について合意をしたものとみなす規定としております。

定型取引を行うことに合意したとはいえ、相手方に表示していただけで、当事者が必ずしも認識していない細かい内容にまで拘束されることとしたのはなぜでしょうか、お答えください。

政府参考人(小川秀樹君)

先ほども申し上げましたが、定型約款の内容が契約内容となる場合といたしまして二つの場面がございます。

一つは、改正法案において、約款による契約の成立要件について、約款の内容を認識していなくとも定型約款を契約の内容とする旨の合意があったとき、この場合には定型約款の個別の条項について合意があったものとみなすこととしております。さらに、今御指摘ありました、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき、これ二号でございますが、定型約款の個別の条項について合意があったものとしております。

その理由は、当事者が実際にその取引を行ったのであれば、通常は定型約款を契約の内容とする旨の黙示の合意があったと言えるところ、定型約款を利用した取引の安定を図る観点からそのようにしたというものでございます。

このように、ここでの表示といいますのは、定型約款を契約の内容とする旨の黙示の合意があったと言えるのと同様の状態と言えるものでなければならないというふうに考えられます。したがいまして、この表示とは、取引を実際に行おうとする際に、顧客であります相手方に対して個別に面前で示されていなければならないとの意味であり、例えば定型約款準備者のホームページなどで一般的にその旨を公表しているだけでは足りないものであります。

なお、不特定多数の者との間で画一的な取引が大量に行われるという定型取引におきましては、顧客であります相手方としても、大部にわたる契約書面の内容を細部まで認識して取引を行うことを望まない場合がほとんどであるという実情があります。

このことに照らしますと、相手方の保護としては、不当な条項を排除するルールのほか、定型約款の内容を知る機会を確保することで十分であり、そのような機会は、ここでの定型約款を契約の内容とする旨の表示と、これを契機として定型約款の内容の表示を定型約款準備者に求めることによって確保されていると考えられます。したがいまして、この規律につきましては、相手方保護の観点からも妥当なものであるというふうに考えております。

糸数慶子君

今回、民法改正法案と一括して審議されております整備法案、この整備法案において、鉄道営業法、さらに航空法などについて、民法第五百四十八条の二第一項の規定の特例を定めております。具体的には、同項第二号の定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときに、公表していたときを加えるものとなっています。これらの法律においては、定型約款の内容を相手方に表示するどころか、公表さえすれば足りるとする趣旨は何でしょうか。また、公表とは具体的にどのような方法を想定しているのでしょうか、お答えください。

政府参考人(小川秀樹君)

改正法案におきましては、約款を用いた取引の法的安定性を確保するため、定型約款に関する規律を設けることとしております。そして、定型約款による契約の成立要件につきましては、約款の内容を具体的に認識していなくとも、定型約款準備者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示したときには、定型約款の個別の条項について合意があったものとみなすこととしております。これが先ほど申し上げました五百四十八条の二第一項第二号の内容でございます。

しかし、例えば鉄道の旅客運送契約のように、契約により提供されるサービスの公共性が高く、極めて大量の利用者との間で速やかに契約を締結することが不可欠な取引については、定型約款を契約の内容とすることの合意やその旨の表示を厳格に要求することは現実的ではなく、サービスの利用者の利便性の観点からも定型約款による契約の成立を容易に認めることとする方が相当であると考えられるところでございます。また、これらの取引につきましては、そのサービスを提供する事業者は所管行政庁の監督に服しているところでございます。

そこで、鉄道などの公共交通機関による旅客の運送に係る取引などにつきましては、定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ公表していた場合には、契約前の個別の表示がなくとも当該定型約款が契約の内容となる旨の特別の規定を設けるのが適当であると考えられたところでございます。

そして、そのような規定は、特定の事業分野における一定の取引のみを対象とするものでありますため、民事基本法であります民法ではなく、鉄道営業法や航空法などの対象事業に係る規制などを定めた法律に設けることとしております。これが整備法の内容でございます。

公表の方法でございますが、公表の方法としては、例えば定型約款準備者のホームページ上にある特定の定型約款を契約の内容とする旨を明示すること、こういったことが想定されているところでございます。

糸数慶子君

第五百四十八条の二第二項では、いわゆる不当条項について規定しております。これは、相手側の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては合意をしなかったものとみなす規定であり、定型約款の一方当事者である消費者の保護に資する重要な規定でありますが、要件が大変抽象的で曖昧であり、何が不当条項に該当するかについての予測可能性が低いと言わざるを得ません。

不当条項の要件についてもう少し具体化できなかったのでしょうか、お伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

不当条項規制によりまして定型約款の内容の合理性を確保することは、定型約款の内容を理解しないままにその内容に拘束されることとなる取引の相手方の保護のために重要であります。そこで、改正法案におきましては、定型約款中の個別の条項の効力を争う法的な根拠を設ける観点から不当条項の効力を否定する規定を設け、その考慮要素なども明記することとしております。

確かに、この規定の内容は、御指摘ありましたように、抽象的な法規範として定立されておりますため、これを見ても直ちにどのような条項がこれに該当するかは必ずしも明らかではございません。

もっとも、これをより具体的なものとすることにつきましては、対象となります定型取引には極めて多様なものがあり、そこで問題となり得る不当な条項の種別も多岐にわたりますことから、技術的に困難であります上、一定の不当な条項を念頭に置いて規律の具体化を図り過ぎますと、かえってその対象を狭める結果にもなりかねないなどの問題がありますため、ある意味致し方ない面もあろうかというふうに考えております。

なお、改正法案の立案の過程では不当条項のリストを設けることが検討されました。そういうふうにすればかなり具体的な形になるわけですが、しかし、一般法である民法において不当条項リストに挙げられるべき条項を網羅的に抽出することが困難であるという問題がございました。

さらに、逆にブラックリストと呼ばれるもの、つまり、常に不当なものと評価され、不当性を阻却する事由の主張、立証を許すことが相当でない条項を定めた規定を設けて、このような条項について常に無効とするという効果を定めることに対しては、契約締結に至る経緯、当事者の属性、対価の多寡などを含めた総合的な判断の余地をなくす結果となりますため、具体的に妥当な結論を導くことができないこととなるおそれがあるほか、リストに挙げられた条項以外のものが無効ではないという反対解釈を招くおそれがあるとの懸念もございました。

他方で、グレーリストと呼ばれるもの、これは、一応不当なものと評価されるが、当事者が不当性を阻却する事由を主張、立証することによって不当という評価を覆す余地がある条項を定めた規定でございますが、こういった規定を設けることにつきましては、当事者は、形式的にグレーリストに該当していれば、それが不当条項には該当しないと確信を持って判断することができない限り無効とされるリスクを回避する観点から、その条項をできるだけ契約に用いないこととせざるを得ず、これによって今度は取引に過度な萎縮効果が働くおそれがあるという懸念もございました。

以上のような懸念がございましたことを踏まえまして、改正法案におきましては不当条項リストの規定を設けないこととしたものでございます。

以上申し上げましたとおり、改正法案の内容は取引の相手方保護の観点からは合理的なものであると認識しておりますが、確かにその規定は抽象度が高いという点はございますので、適切な解釈、運用の蓄積によってその予見可能性が高められるよう、制度趣旨の周知には十分努めてまいりたいというふうに考えております。

糸数慶子君

今回新設される第五百四十八条の二第二項は消費者契約法第十条と似ておりますが、両者はどのような関係にあるのでしょうか。第五百四十八条の二第二項も定型約款準備者のその相手方を保護する趣旨なのでしょうか、お伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

改正法案におきましては、定型約款の個別の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては合意をしなかったものとみなすこととしております。これが改正法案の五百四十八条の二の第二項でございます。この規定を設けました趣旨は、顧客である相手方が約款の個別の条項の内容を具体的に認識しないまま取引が行われるために、合意をしたものとみなすことが適切ではない条項が契約の内容に含まれるといったことを防止することにありまして、これらも相手方の保護に資するものでございます。

他方で、消費者と事業者との間の契約であります消費者契約に適用される消費者契約法第十条は、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効としております。

このように、五百四十八条の二の第二項と消費者契約法第十条とはいずれも契約の当事者の一方にとって不当な内容の契約条項の効力を認めないということとするものでありまして、かつ、その要件も類似しているように見えるわけでございますが、以下申し上げますような相違点がございます。

まず、定型約款に関する規定は消費者と事業者との間の消費者契約に適用対象を限定していないので、例えば企業がワープロソフトなどを購入する契約を締結した場合のように、事業者間の取引でありましても改正法案の第五百四十八条の二は適用され得るものでございます。

また、その要件の中でも最も主要な部分であります信義則違反の有無の判断につきましても、改正法案におきましては顧客であります相手方が約款の個別の条項の内容を認識しないまま取引が行われるという定型取引の特質が重視されることになるのに対しまして、消費者契約法第十条におきましては、これは消費者と事業者との間に様々な格差があること、こういったことを踏まえて判断されるわけでございます。

このように、改正法案の五百四十八条の二第二項と消費者契約法第十条とは、適用範囲を異にするのみならず、その判断においても重視すべき考慮要素も異なりまして、したがいまして導かれる結論に違いが生ずることもあり得るものというふうに考えております。

糸数慶子君

ありがとうございました。

時間が参りましたので終わりますが、通告しておりました質問に関しては次回以降に回したいと思います。

ありがとうございました。