国政報告

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民法(債権) 意思能力、公序良俗、契約類型、契約の成立、法定利率、成人年齢と婚姻適齢

第193回国会 2017年5月25日 法務委員会

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。

今回の債権法改正案については、法案提出の経緯から個別の論点、そして今後の民法改正に至るまで一通りの質問をしてまいりました。しかし、今回の改正は民法制定後百二十年を経過して初めての抜本的改正であり、改正対象が広範多岐にわたるため余り議論されていない論点も数多く残っています。本日はこれらについてお尋ねをしたいと思います。

まず、意思能力についてお尋ねをいたします。今回、意思能力に関する規定が新設されましたが、意思能力とはどういうものなのか、お尋ねいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

人は原則として自己の意思に基づいてのみ権利を取得し又は義務を負担するのであり、この言わば私的自治の原則は近代法の根本原理とされるわけでございます。この原理の具体的な表れとして、人が契約などの法律行為をするには行為の結果を判断するに足るだけの精神能力、すなわち意思能力を有していなければならず、意思能力を有しない者がした法律行為は無効となると考えられております。

なお、この考え方は民法に明文の規定はございませんが、当然の前提として、判例、学説上、これまで異論なく認められてきたところでございます。

糸数慶子君

今回の改正では、意思能力がどういうものか定める定義規定は置かれていません。国民一般に分かりやすい民法という観点からは、この意思能力の定義規定を置くべきだったのではないでしょうか。定義規定を置かなかったのはなぜなのか、お尋ねいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

意思能力につきましては、行為の結果を判断するに足るだけの精神能力をいうなどと言われてはおりますが、その具体的な内容についてはこれまでも学説上様々な見解に分かれておりました。

そこで、改正法案の立案の過程におきましては、民法を分かりやすいものとするとの観点から、現在の裁判実務を踏まえまして意思能力の定義規定を置くことも検討の対象となりました。具体的には、裁判例の中には意思能力として要求される精神能力は具体的な法律行為ごとに異なるとの考え方を採用するものがあることを踏まえまして、このような考え方を前提とした規定を置くことが検討されました。

しかしながら、このような考え方は現在の裁判実務において一般的であるとは必ずしも言えないと考えられるわけでございます。また、法律行為ごとに意思能力が異なるとの理解を強調いたしますと、意思能力によって無効となる事案が増大し、取引の安全が不当に害されるのではないかという懸念もございました。

他方で、意思能力は個別具体的な法律行為の内容にかかわらず行為者ごとに一律に判断されるとする考え方もございますが、この考え方自体も裁判実務で確立しているものではなく、このような考え方を前提とした規定を置くのは相当ではないと考えられました。

そこで、改正法案におきましては、意思能力を有しない場合の効果に関する規定を設ける、三条の二でございますが、そこの規定を設ける一方で、意思能力の定義を置かないこととし、意思能力の具体的な内容は引き続き実務の解釈、運用に委ねることとしております。

糸数慶子君

では、次に公序良俗について伺います。

第九十条の改正によって条文上は無効となる法律行為の範囲が広がったように読めますが、そのような解釈でよいのでしょうか、お伺いします。

政府参考人(小川秀樹君)

まず、今回の九十条の改正の趣旨でございますが、現行法の九十条によって無効とされるのは、公序良俗に反する事項を目的とする法律行為と規定されておりまして、その文言上は、法律行為の内容が公序良俗に反するものが対象とされております。

しかし、判例は、例えば賭博の用に供することや賭博で負けた債務の弁済に充てるという、そういう動機の下で行われました金銭消費貸借契約のように、法律行為の内容自体は公序良俗に反するものではない事案におきましても、その動機を相手方が知っている場合には法律行為を無効としており、民法制定以来の解釈、運用を通じて、法律行為の内容だけでなく、法律行為が行われる過程その他の事情も広く考慮して無効とするか否かが判断されるようになっております。

そこで、改正法案においては、このような裁判実務における判断の枠組みを条文上も明らかにするため、「事項を目的とする」という文言を削除し、端的に公序良俗に反する法律行為を無効とすることとしております。

無効となる法律行為の範囲という問題ですが、このように改正法案は現状と比べて無効となる法律行為の範囲を実質的に広げるものではございませんが、裁判実務における現状の判断枠組みと一致するように文言の修正を図ったものということが言えようかと思います。

糸数慶子君

第九十条では、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効とされています。一般条項とはいえ、法律行為の無効という効果の重大性と比べて、公の秩序又は善良の風俗に反するという要件は、これ余りにも曖昧なのではないでしょうか、改めて見解を伺います。

政府参考人(小川秀樹君)

今回の改正も、民法を国民一般に分かりやすいものとするという観点に基づくものが理由の一つでございますが、民法を国民一般に分かりやすいものとするとの観点は重要ではございますが、そのためにどのような規定を設けるのが適切であるかは、これは一概には申し上げることはできませんし、適用される規律をその細部まで明快に規定することには技術上の限界もございますので、個別に慎重に検討する必要があるということが言えようかと思います。

そして、民法第九十条につきましては、法律行為の無効という重大な行為をもたらすもの、これは委員御指摘のとおりでございますが、その要件の具体化については、予測可能性を向上させるという指摘がある一方で、具体化したとしても、ある程度抽象的な要件とすることは避けられないものであるため、取引への萎縮効果をもたらすなどの指摘もされているところでございます。

現に法制審議会におきましても、公序良俗違反の一つの例であるとされる暴利行為について、その明文化を図るか否かを審議いたしましたが、賛否が分かれ、改正法案には盛り込まれなかったものでございます。

このような経緯なども踏まえまして、改正法案においても、公の秩序又は善良の風俗に反するという要件は維持することとしたものでございます。

糸数慶子君

この公序良俗又は善良の風俗という要件について、私は今内容が曖昧ではないかということをお伺いしたわけですけれど、この要件の可能な限りやはり具体化すべきではないかというふうに思います。

また、これは先日の参考人質疑におきまして高須参考人も、こういう場合なら公序良俗違反になるというようなことの参考となるような規定があってもよいのではないかというふうな意見を述べていらっしゃいます。

国民一般に分かりやすい民法という先ほど御答弁もございましたけれども、その観点から、確立した判例を明文化したのが今回の改正法の内容の一つであるということですが、やはり第九十条については、このような試みはなさらなかったのでしょうか。

政府参考人(小川秀樹君)

法制審議会におきましては、民法第九十条の規定の内容の全般を対象として国民一般に分かりやすいものとするという観点からその規律の具体化を図る検討を行ったことはございません。これは、民法第九十条については、公序良俗違反に当たる行為の類型としてどのようなものがあるのか、これ現時点におきましても確立した解釈があるわけではなく、規律の具体化が困難であるということによるものと考えられます。

ただ、これに対しまして、公序良俗に反する行為の典型例の一つと言われます暴利行為につきまして、その明文化が検討されるなどの試みはございました。もっとも、無効とされるべき暴利行為の内容がこれも確立しているとは言い難い現状において、近時の裁判例をも踏まえてその要件を適切に設定することは困難でありまして、必ずしも予測可能性を確保するという目的を達成することはできない上、現時点で一定の要件を設定することで将来の議論の発展を阻害しかねないとも考えられました。

そこで、改正法案におきましては、民法第九十条との関連での暴利行為に関する規定を設けることとはされなかったわけでございます。

糸数慶子君

四宮和夫、そして能見善久、この二人による「民法総則」には、我が国の公序良俗による司法的介入は諸外国よりも広い範囲で行われているという記述がございます。

このように、公序良俗という抽象的な要件のままでは経済が必要以上に司法的コントロールに服することになり、例えば新規分野における私人の経済活動の予測可能性を低下させるなどの恐れもあるわけですが、この点についての御認識をお伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

民法第九十条により無効となる場合を明文化することにつきましては、私人の経済活動の予測可能性を向上させ得るとも考えられますが、逆に明文化するとしても、ある程度はやはり抽象的な要件で規定することになりますため、これに当たるかどうかについて疑念を生じ、かえって取引への萎縮効果を生じさせるなど、経済活動に悪い影響を及ぼし得るという指摘もされているところでございます。

例えばこれ、先ほども述べましたところですが、法制審議会においても公序良俗違反と評価できる幾つかの類型の一つであります暴利行為についてその明文化が検討されたわけですが、これについては何をもって暴利行為というかを抽象的な要件で規定すると取引への萎縮効果が生ずるとして、これ、経済団体を中心に明文の規定を設けることに反対する意見もございました。

このように、民法九十条に該当する一定の場合を明文化するに当たりましては、どのようにして適切な要件を設定するかが重要であると考えられますが、現状におきましては十分な最高裁判例の蓄積などもなく、民法第九十条の具体化については慎重に検討する必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。

糸数慶子君

今回の民法改正、大きな目的の一つに国民一般に分かりやすい民法という、その観点から今の答弁を伺いますと、中身といいますか内容というのがどんなに角度を変えて質問しても同じような答弁しかなさらないということから考えていきますと、一部の経済界のそういう意見を聞いて、国民一般に分かりやすい民法という観点からはちょっと外れているのではないかというふうに思います。

次に、民法に規定されている契約類型についてお尋ねいたします。

民法第三編の債権編の第二章契約には、贈与から和解まで十三種類のいわゆる典型契約の規定があります。何度も申し上げてまいりましたが、民法制定以来百二十年が経過して、その間の社会経済情勢の変化も大きいと思いますが、今回新たな契約類型を設けることは検討されたのでしょうか、伺います。

政府参考人(小川秀樹君)

現行法には、御指摘ありましたように、売買、消費貸借などの十三種類の典型契約についての定めが置かれております。これは現行法の起草時に諸外国の法制ですとか我が国の取引の実態を勘案して、主要な契約についての規定を設けることとしたものであるというふうに言われております。

改正法案の立案過程におきましては、現代の取引の実態を踏まえ、主として、ファイナンス・リース契約、それからライセンス契約についての規定を追加することが検討されました。また、法制審議会の初期段階におきましては、委任や請負等に該当しないサービス契約についての規定を設けるということが検討されたところでございます。

糸数慶子君

では、次に、要物契約及び諾成契約についてお尋ねをいたします。

今回の改正で、典型契約のうち使用貸借及び寄託は、成立のために目的物の授受が必要な契約である要物契約から、当事者の合意のみで成立する契約である諾成契約へと変更されています。また、要物契約であった消費貸借について、諾成的消費貸借のその規定も新設されたため、典型契約は全て諾成契約として締結できることとなります。

このように、今回の法改正は、要物契約をなくす、そのような方向の改正であると思いますが、これはいかなる理由によるものでしょうか、お伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

現行法の五百八十七条は消費貸借は金銭などの目的物が相手方に交付されたときに成立するとしておりまして、このように契約の成立に目的物の交付を要する契約を御指摘ありましたように要物契約といいます。しかし、金銭の借入れについて貸主と借主が合意したにもかかわらず、契約はまだ成立していないとして借主からの金銭の交付請求を貸主が拒絶することができるとするのでは、確実に融資を受けたい借主にとっては不都合でございます。このため、判例は、現行法の下でも当事者間の合意のみで貸主に目的物を貸すことを義務付ける契約をすることができるとしておりまして、このような契約は諾成的消費貸借と呼ばれております。そこで、改正法案においては、このような判例を踏まえまして、諾成的消費貸借に関する明文の規定を設けることとしております。

また、寄託の関係で申し上げますと、現行法六百五十七条は寄託を要物契約であるとしております。しかし、寄託物の保管について寄託者と受寄者とが合意したにもかかわらず、契約はまだ成立していないとして受寄者が寄託物の引取りを拒絶することができるとするのでは、保管場所をあらかじめ確保しておきたい寄託者にとりまして不都合であります。このため、現行法の下でも当事者の合意のみで受寄者に寄託物を受け取って保管することを義務付ける契約が可能であると解されておりまして、これも諾成的寄託と呼ばれ、実務上も広く用いられているわけでございます。そこで、改正法案におきましては、寄託契約を諾成契約とすることとし、寄託は当事者の合意がある場合には寄託物の交付がなくともその効力を生ずることとしております。

さらに、使用貸借の関係でも、五百九十三条はこれを要物契約であるとしております。しかし、目的物を無償で貸すことについて貸主と借主が合意したにもかかわらず、貸主が契約はまだ成立していないとして借主からの目的物の引渡し請求を拒絶することができるとすれば、確実に目的物を無償で借りたい借主にとって大きな不利益を生ずることになります。このため、現行法の下でも当事者の合意のみで貸主に目的物を無償で貸すことを義務付ける契約をすることができると解されておりまして、これは諾成的使用貸借と呼ばれております。そこで、改正法案では、使用貸借を諾成契約とすることとし、使用貸借は当事者の合意があれば目的物の交付がなくともその効力を生ずることとしております。

このように、改正法案におきましては、言わば取引の実態を踏まえつつ、確立した解釈を明文化することで民法を国民に一般に分かりやすいものとするため、そういう観点から今申し上げました要物契約を諾成契約としたものでございます。

糸数慶子君

贈与契約については我が国では諾成契約とされていますが、諸外国では安易な贈与の約束を防ぐために贈与が要式行為とされている国も多いということであります。諸外国と比べた我が国の贈与契約の特徴及び贈与契約を要式行為とすることについての認識をお伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

まず、我が国の贈与契約の特徴という点でございますが、贈与契約とは、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによってその効力を生ずる契約をいいまして、その無償性及び非取引行為性にその特徴があるなどと言われております。

また、諸外国の民法では贈与を一定の要式を必要といたします要式契約としているのに対しまして、日本の民法では贈与を諾成契約としているなど、比較法的には、日本の民法は贈与の合意そのものに大きな保護を与えている点に特殊性を有していると言われております。

我が国の民法は、贈与をもって要式行為とせず口頭をもっても有効に贈与契約が成立するものとしておりますが、書面によらない贈与については、その履行の終わった部分を除いては各当事者が解除をすることができるとされておりまして、贈与を要式行為とした場合とその効果において実質的に大きな違いはないと考えられるわけでございます。

そのため、従来の我が国における贈与についての考え方を改めてまで贈与契約を要式行為とする必要はないものと考えているところでございます。

糸数慶子君

次に、契約の成立についてお尋ねいたします。

まず、今回の改正で新設された第五百二十一条は契約の締結及び内容の自由についての規定ですが、この規定を新設するその趣旨をお伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

近代私法の基本原則と言われます契約自由の原則、これは、契約を締結するかしないかの自由、それから契約の内容を決定する自由、契約締結の方式の自由などをいうとされておりますが、これらの基本原則は現行民法の下では明記はされておりません。これらの基本原則は確立した法理として一般的に認められているものでありまして、民法を国民一般に分かりやすいものとするためには明文化することが望ましいと考えられます。

具体的には、契約を締結しない自由があることなどの多くの消費者が知るべく基本的なルールが言わばより読み取りやすくなるものと考えられるわけでございます。そこで、そういった観点から、改正法案におきましてはこれらを明文化することとしております。御指摘ありましたように、五百二十一条に明文化した規定を設けておるところでございます。

糸数慶子君

同条第一項の法令に特別の定めがある場合とは具体的にどのような場合でしょうか、また、同条第二項の法令の制限とは具体的にどのようなものでしょうか、お答えください。

政府参考人(小川秀樹君)

まず、法令に特別の定めがある場合についてですが、改正法案におきましては、何人も契約をするかどうかを自由に決定することができる旨の規定を新設しておりまして、これは五百二十一条の第一項です。これは契約締結の自由と呼ばれております。

もっとも、契約締結の自由も無制限ではなく、法令上、契約の締結を義務付ける規定が設けられている場合などがあることから、こうした場合を除くという趣旨で、御指摘の「法令に特別の定めがある場合を除き、」という文言を加えております。その具体的な例ですが、例えば、水道事業者は水道法により正当な理由がなければ給水契約の申込みを拒んではならないとされておりまして、契約締結の自由が制限されておりますので、典型例として挙げることができようかと思います。

それから、法令の制限の方の関係ですが、改正法案におきましては、契約の当事者はその内容を自由に決定することができる旨の規定を新設しており、これは契約の内容決定の自由と呼ばれております。

もっとも、当事者の合意さえあればどのような内容であっても契約をすることができるわけではなく、法令によって制限される場合があることから、そのような制限の存在を明確化する趣旨で、御指摘の「法令の制限内」という文言を加えております。例えば、借地借家法につきまして、借地権の存続期間は三十年以上とされ、これより短い存続期間の定めは無効とされております。こういったものを例として挙げることができようかと思います。

糸数慶子君

今回の改正では隔地者間の契約の成立に第五百二十六条第一項が削除されることになりますが、その趣旨をお伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

現行法は、いわゆる隔地者に対してした意思表示について、原則としてその意思表示が相手方に到達したときに効力を生ずるものとしております。しかし、隔地者間の契約につきましては、意思表示の到達に時間が掛かりますため、早期に契約を成立させ、承諾者にその履行の準備を開始させる必要があることを考慮して、申込みをされた者が承諾の通知を発したときに契約が成立するという、いわゆる発信主義というものを採用して、その特則を設けております。これが現行法の五百二十六条一項でございます。

もっとも、発信主義は取引の迅速性の要請は満たすわけですが、承諾の通知の発信時に契約を成立させる結果、仮に何らかの理由で承諾の通知が申込者に到達しない場合にも契約は成立し、申込者は不測の損害を被ると、こういう事態が生ずるおそれがございます。

また、高度な通信手段が整備された現代社会におきましては、隔地者間の取引でありましても、通知が迅速、確実に相手方へ到達することが見込まれる上、当事者が迅速な契約の成立を望むのであれば電話や電子メールなどの様々な手段を用いることが可能となっていることから、あえて隔地者間であることに着目した特例を設ける必要性は乏しくなっていると考えられます。

そこで、改正法案におきましては、隔地者間の契約の成立時期について発信主義の特則を定めました現行法五百二十六条一項を削除して、承諾の通知が申込者に到達した時点で契約が成立するということとしております。

以上でございます。

糸数慶子君

確かに、民法制定から現在に至るまでのこの百二十年間における通信手段の発達は大変大きなものがあるわけですが、隔地者間の通信手段として想定されるものは民法制定当時と現在とではどのような違いがあるのでしょうか、改めてお尋ねいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

民法のうち債権関係の規定につきましては、明治二十九年に制定されまして以来、約百二十年間実質的な見直しがほとんど行われておらず、おおむね制定当時の規定内容のまま現在に至っているわけでございます。

この間における我が国の社会経済情勢は、取引量が劇的に増大するとともに、取引の内容が複雑化、高度化する一方で、情報伝達の手段が飛躍的に発展したことなど、様々な面において著しく変化しております。

例えば、民法制定当時は情報伝達の手段としては主に郵便が想定されていたと考えられるわけですが、現在では郵便のみならず電子メールなどの様々な手段を用いることが可能となっている、これが民法制定当時と現在での通信手段における大きな違いと言えようかと思います。

糸数慶子君

隔地者間の契約の成立に関しては、二〇〇一年に成立した電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律、この第四条において既に、隔地者間の契約における電子承諾通知については民法第五百二十六条第一項及び第五百二十七条の規定の適用を排除して到達主義を採用しています。今回の改正によって発信主義を廃止するため、この特例法も第四条が削除され、題名も変更になります。しかし、幾ら通信手段が発達しても、いわゆる対話者間、つまり両当事者が直接相対している場合、電話で話している場合と電子メールでやり取りをする場合とは若干違いがあると思います。

特例法制定時の国会における議論でも、サーバートラブルでメールが届かない場合は裁判によって個々の事情によって判断する旨の答弁がありました。サーバートラブルでメールが届かないことは現在でもあり得るわけですが、その場合はどのような処理になるのでしょうか、お伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

現行法は隔地者に対していたしました意思表示について、原則としてその意思表示が相手方に到達したときに効力を生ずるものとし、例外的に承諾の通知について、通知を発したときに契約が成立するという特則を設けております。これが九十七条一項と発信主義を定めました五百二十六条一項の関係でございます。

意思表示の到達とは、意思表示が相手方の了知可能な状態に置かれることをいうとされております。ここでいう了知可能な状態とは、画一的に判断されるのではなく、個別の事案の事実関係に即して判断される一種の規範的な概念ということが言えようかと思います。

もっとも、電子的手段による意思表示によって契約がされる場合については、現在でも御指摘ありました電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律によって民法の特例が設けられており、ここでは承諾の通知についても到達主義が採用されております。

そして、その到達時期については、最終的にはこれは個別の事案ごとの判断となるわけですが、やや抽象化した事案で一例を申し上げますと、電子メールにより意思表示がされた場合には、当該電子メールが相手方の通常使用するメールサーバーの中のメールボックスに読み取り可能な状態で記録された時点であるなどと解されているものと承知しております。この解釈を前提といたしますと、サーバーのトラブルなどによって当該電子メールが相手方の通常使用するメールサーバー中のメールボックスに読み取り可能な状態で記録される前の時点では意思表示が到達したとは言えないため、その意思表示は効力を生じないことになると考えられます。

なお、改正法案におきましては承諾の通知についてもその意思表示が相手方に到達したときに効力を生ずるものとしていることに伴いまして、整備法案におきましては先ほど申し上げました電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律第四条は削除することとしております。これが整備法案二百九十八条の規定でございます。

糸数慶子君

次に、法定利率について伺います。

法定利率の変動制への移行に伴い、第四百十九条第一項、金銭債務の特則についての規定も改正されます。これは、金銭債務の不履行における損害賠償額を債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率によって定めるというものです。

同項ただし書では、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によると規定していますが、約定利率が法定利率を下回っている場合はどうなるのでしょうか、伺います。

政府参考人(小川秀樹君)

第四百十九条第一項は、金銭の給付を目的とする債務の遅延損害金の額は法定利率によって定めるが、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によるものとしております。したがって、御指摘にありますような約定利率が法定利率を下回っている場合の遅延損害金の額については文言上は規定をしておりません。

もっとも、約定利率が法定利率を下回っている場合に、遅延損害金の額がその約定利率によるべきか否かにつきましては、これは判例はございませんで、また学説上も必ずしも確立した学説はなく、いまだに議論の乏しい状況にあるようでございます。そのため、御指摘の問題について確たることは申し上げにくいわけでございますが、その文言からいたしましても、約定利率が法定利率を下回っている場合に遅延損害金の額がその低い約定利率によるとの解釈が取られる可能性は低いのではないかというふうに考えております。

糸数慶子君

今回の改正では法定利率が見直され、五%から三%に下げることになりましたが、これは市場金利と乖離した法定利率を市場金利に近づける趣旨である旨の答弁があったかと思います。近年の低金利下では、約定利率として三%を下回る利率を定める場合も想定できると思いますが、そのような利率の合意は無効となるということでよろしいのでしょうか。

政府参考人(小川秀樹君)

遅延損害金の額について約定利率として定めた三%を下回る利率で算定するという合意、これにつきましては第四百十九条第一項に反し無効となるか否かという点についても、判例もなく、また学説上も確立した考え方はなく、いまだに議論の乏しい状態にあるものと承知しております。そのため、この点につきましても確たることは申し上げにくいわけですが、契約自由の原則に照らしても、そのような合意が直ちに無効とまで言うことは困難であると考えております。

もっとも、第四百十九条第一項に反すると言うかどうかはおくとしても、そのような合意は債権者にとっては大きな不利益をもたらすものでありますので、具体的な事案ごとの判断ではありますが、そのような合意は公序良俗に反し無効とされる可能性もあるのではないかと考えられるところでございます。

糸数慶子君

現在のこの低金利下でそのような合意ができないということになりますが、それでいいのでしょうか、またこの点につきまして議論はなかったのでしょうか、お伺いいたします。

政府参考人(小川秀樹君)

先ほども申し上げましたが、そのような合意が第四百十九条第一項に反し無効となるとは、これは直ちに言うことはできないというふうに考えております。

また、法制審議会における検討の過程においては、遅延損害金の額について約定利率として定めました三%を下回る利率で算定するとの合意が第四百十九条第一項に反し無効となるか、あるいは無効とすべきかといった議論は、この点につきましてはなかったものというふうに承知しております。

糸数慶子君

では、最後に金田大臣にお尋ねをいたします。

三月九日のこの法務委員会で、成人年齢の十八歳引下げの民法改正案の審議が見送りになるのではないかという報道があり、事実であるかどうかお尋ねしたところ、金田大臣は、「法務省としては適切な時期に民法改正案を提出する考えであります。」と答弁をされました。四月十三日にも同じくお伺いいたしましたが、同じ答弁でございました。

適切な時期というのはいつなんでしょうか、それは一日も早くということではなかったんでしょうか、お伺いいたします。

国務大臣(金田勝年君)

糸数委員のお尋ねにお答えをいたします。

民法の成年年齢を十八歳に引き下げるとともに、女性の婚姻開始年齢を十八歳に引き上げる内容の民法改正法案につきましては、昨年九月に実施をいたしましたパブリックコメント手続に寄せられた御意見等を踏まえながら、現在、法案提出に向けた準備作業を進めております。

法務省としましては、この法案の提出を後回しにしているというわけではございません。できる限り早期に国会に提出することができるように、その準備作業に全力を尽くしているところであります。

いずれにしましても、法務省といたしましては適切な時期にこの民法改正法案を提出する考えであります。

糸数慶子君

成人年齢の引下げとともにこの提出予定だった婚姻年齢の十八歳への引上げについては、今大臣お話ございましたが、これは九六年の法制審答申にあったわけです。国連は、十八歳未満の婚姻を児童婚と指摘をし、婚姻最低年齢の引上げを求めております。婚姻年齢については与野党ともこれは異論がないはずなんですが、なぜ後回しにされるのでしょうか。

金田大臣、改めてこの改正案をいつ提出されるか伺います。

国務大臣(金田勝年君)

ただいま委員の御質問にお答えしました中にもございましたが、できる限り早期に国会に提出することができるように、その準備作業に全力を尽くしているところであります。

糸数慶子君

何度御質問申し上げましても、できるだけ早くとおっしゃるんですが、具体的にその明確な答弁が出ないのは本当に残念であります。

やはり法務委員会というのは、人権を侵害するおそれのある共謀罪法案を優先し、人権政策を軽視する政府の在り方に、本当に問題であるということを言う場所ではないかというふうに思います。人権を所管するこの法務省が何といっても最優先に取り組むべきものは人権問題であるということを強く申し上げて、時間が参りましたので私の質問を終わりたいと思います。

改めて大臣に御要望を申し上げたいと思いますが、先ほど何度も繰り返しておりますけれども、是非とも、この九六年の法制審からの答申もあった、そして国連の方からも指摘をされております婚姻の最低年齢の引上げを早急に議論ができる、その状況をつくっていただくようにお願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

ありがとうございました。