国政報告

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共謀罪 沖縄県民の置かれている状況と共謀罪の関係、「計画」、計画罪の罪数関係 ※対総理質疑、対政府質疑

第193回国会 2017年5月30日 法務委員会

<午前 対総理質疑>

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。

質問に入ります前に、加計学園問題について一言申し上げます。

安倍総理、国民の疑念を払拭されるどころか、ますます強くなっています。問題がないのでしたら、正々堂々と国会の場で証明されるべきだというふうに思います。そうしなければ、国家戦略本部は、規制の岩盤に風穴を空けるどころか、法律に抜け穴を空け、違法行為をしているという批判を免れない、そのことを申し上げ、質問に入りたいと思います。

まず、本日は安倍総理に、沖縄県民が置かれた状況といわゆる共謀罪法案について伺います。

安倍総理は、沖縄県民を本土の人たちと同様に日本国民と考えていらっしゃるのでしょうか。沖縄の本土復帰の一九七二年から二〇一六年末までの間に様々な事件や事故が発生しております。例えば、航空機関連事故は七百九件も発生をしております。米軍人軍属等による刑法犯罪は五千九百十九件発生して、そのうち、殺人、強盗、強姦など凶悪犯が五百七十六件に上っています。九五年には、小学校の少女が米兵三名に強姦をされる痛ましい事件が発生し、昨年にも、二十歳を迎えた女性が元米軍属の男に暴行され、殺害され、遺棄されました。

北朝鮮のミサイル発射で、安倍総理は満身の怒りを込めて抗議をされます。もちろん、抗議はこれは当然のことだと思います。しかし、翻って、多くの沖縄県民の命と暮らしを脅かすこの米軍に対して安倍総理は強く抗議をされているのでしょうか、伺います。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

戦後七十年以上を経た今もなお、沖縄には大きな基地負担を負っていただいており、この事実を政府として重く受け止めております。政府としても、現状は到底是認できるものではないと考えており、沖縄の負担軽減のため、できることは全て行うとの方針の下、全力で取り組んでおります。

米軍による事件、事故は本来あってはならないものであり、政府としては、米側に対して、隊員の教育や綱紀粛正及び再発防止の徹底について機会あるごとに強く申入れを行ってきております。

もちろん、抗議、申入れだけではなく、米軍、国、沖縄県や関係市町村の三者が協力して事件、事故防止のための協議を行っているほか、沖縄に新たに着任した全ての軍人軍属等を対象とした米軍の研修資料を沖縄県等の意見を踏まえて改定し、また、青い回転灯を付けたパトロールカー百台による沖縄・地域安全パトロール隊による防犯パトロールを実施するなど、様々な取組を行ってきております。

今後とも、日米間の協力も一層促進しつつ、事件、事故の防止のため、全力で取り組んでいく考えであります。

糸数慶子君

事件、事故に対してちゃんと取り組んでいるというふうにおっしゃいますが、それでも事件、事故は後を絶たないというのが現実であります。

沖縄県民は、県知事選挙、そして衆参、この選挙区の全てにおいて辺野古新基地建設反対の候補者を当選させており、新基地建設のその意思、反対の意思はちゃんと民主主義の手続を経て明確に示してまいりました。ところが、政府はそれを無視し続けています。沖縄県民の人権無視、沖縄の自治権の無視であり、政府の行為こそが重大な憲法違反であると考えます。

政府が沖縄県民の意思を無視して基地建設を強行するとき、意思表示の最後の手段である抗議行動、座込み、ブロックを積む行為、それが共謀罪の、つまりその適用の対象になるというふうにお考えでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

テロ等準備罪は、組織的犯罪集団が関与する一定の重大な犯罪の遂行を計画したことに加え、実行準備行為が行われた場合に成立するものであります。組織的犯罪集団とは、組織的犯罪処罰法上の団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が一定の重大な犯罪等を実行することにあるものをいいます。そして、組織的犯罪処罰法上の団体とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織、すなわち、指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体により反復して行われるものをいうわけであります。

その上で、犯罪の成否を個別的、個別具体的に事実関係を離れて一概に結論を申し上げることは困難でありますが、あくまで一般論として申し上げれば、御指摘のような集団は、団体の要件をそもそも満たさないと思われる上、基地建設反対又は基地建設に反対することによる地域の負担軽減や自然環境の保全を目的としており、一定の重大な犯罪等の実行を目的として構成員が結合しているものとは考え難いので、テロ等準備罪が成立することはないと考えております。

糸数慶子君

沖縄の高江では、ヘリパッド建設に抵抗して市民が座込みを行ったことに対して、警察は全国から機動隊を動員し、多数の市民を負傷させ、また、抗議行動のリーダーである山城博治さんを始め多くの仲間を逮捕、勾留いたしました。山城さんは釈放されましたが、勾留は五か月にも上りました。この山城さんへの不当逮捕、勾留は、国内外から厳しく批判されております。山城さんは、六月にジュネーブで開かれる国連人権理事会で不当弾圧の実態についてスピーチを行うことになっております。

沖縄県民からすれば、今回の共謀罪法案は、政府に抵抗する行為を未然に一網打尽にする意図が明らかにあるのではないかと疑わざるを得ません。このような懸念を払拭できるのでしょうか。安倍総理にお伺いいたします。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

テロ等準備罪処罰法案は、国民の生命と財産を守るため、テロを含む組織犯罪を未然に防止し、これと闘うための国際協力を可能とする国際組織犯罪防止条約を締結するための法案であって、御指摘のような意図は全くないということははっきりと申し上げておきたいと思います。

糸数慶子君

日本全体の人口の一%程度の沖縄県民の意思は本土の意見にかき消され、無視され続けています。安倍総理は、御自身への批判に対しては印象操作はやめてくださいというふうにおっしゃいますが、沖縄県民からすれば、政府が沖縄県民に寄り添い、丁寧に対応しているかのような、また、県民が不当に抗議行動を行っているかのような印象操作こそやめていただきたいというふうに申し上げたいと思います。

本土メディアの多くは沖縄の状況を報じていません。沖縄のメディアが真実を報じると、それに対する圧力とも取れる発言が平然と行われております。これは、印象操作どころか、情報操作が行われているのではないかとさえ言わざるを得ません。なぜかといいますと、パリに本部を置く国境なき記者団によりますと、日本の報道の自由度は七十二位、これは先進国では最も下位を占めております。

沖縄県民がなぜ基地建設に反対するのか。それは、太平洋戦争で唯一の地上戦が行われたところであり、県民の四人に一人が亡くなっているというそういう状況の中で、平和に対する思いが人一倍強いからであります。そして、沖縄に基地が集中するがゆえに、再び攻撃の標的になる可能性が高いからです。

不安をあおる安倍総理の国会答弁について、例えば韓国外務省の報道官は、自制する必要があると不快感を示しました。仮想的な状況を前提とした発言は誤解を招くおそれがあり、朝鮮半島の平和や安全に否定的な影響を及ぼしかねないというふうに指摘をしています。

ナチス政権下でヒトラーの後継者と言われたヘルマン・ゲーリングは、普通の市民は戦争を望まないが、戦争は簡単に起きる、国民は常に指導者たちの意のままになる、それは、自分たちが外国から攻撃されていると言い、平和主義者については、愛国心がなく、国家を危険にさらす人々だと公然と非難をすればいいだけのことだというふうに述べています。

まさに安倍政権は今、朝鮮有事で国民を不安に駆り立て、抵抗する人々を共謀罪で未然に、取締りのその強化をしているように思えてなりません。

安倍総理に申し上げたいと思います。最大のテロ対策は何ですか。それは外交努力によってそのテロの要因となる不公正、そして不公平な社会をなくすこと、そのことが最もテロの対策になるというふうに私は思っております。沖縄県民は、先ほども申し上げましたけれども、やはり、県民の意思によって選びました県知事、そして名護市長、名護市議会議員、さらには衆参両院議員、全てが辺野古の新基地に対して反対の意思を表明をしております。そういう沖縄県の意思を無視して、県民に寄り添っているというふうにおっしゃるわけですが、そうであれば、県民の不安を払拭し、そして先ほども申し上げましたように、私たち県民に与えられた唯一の抗議行動、辺野古の前にあれだけ多くの県民が座り込んでいます。そして、県民の意思を無視して今日もまた辺野古の海を埋め立てる行為をしております。そのことは県民の総意でないということを強く申し上げ、私の質問を終わりたいと思います。

ありがとうございました。

<午後 対政府質疑>

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。

午前中の質疑で安倍総理は、基地建設への抗議行動が共謀罪の対象、適用対象にならないと明確に答弁をされました。金田大臣に伺いますが、基地建設への抗議行動が共謀罪の適用対象とならないという安倍総理と同じ考えであるということでよろしいでしょうか、改めて確認させていただきます。

国務大臣(金田勝年君)

糸数委員の御指摘につきましては、私も総理と同じ意見であります、考えであります。一般論として、お尋ねのような活動にテロ等準備罪が適用されることはないと、このように考える次第であります。

テロ等準備罪というのは、その要件についてお話を申し上げますと、組織的犯罪集団が関与する一定の重大な犯罪の遂行を計画したことに加えて実行準備行為が行われた場合に成立するものであると。組織的犯罪集団とは、これまでも議論が数多く行われておりますが、組織的犯罪処罰法上の団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が一定の重大な犯罪を実行することにあるものをいう。そして、組織的犯罪処罰法上の団体とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体でございます。その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織、すなわち指揮命令に基づいてあらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体により反復して行われるものをいうわけであります。

その上で、犯罪の成否を、個別具体的な事実関係を離れ、一概に結論を申し上げることは困難ではありますが、あくまで一般論として申し上げれば、御指摘のような集団は団体の要件をそもそも満たさないと思われる上、基地建設反対又は基地建設に反対することによる地域の負担軽減や自然環境の保全を目的としておると考えられまして、一定の重大な犯罪等の実行を目的として構成員が結合しているものとは考え難いわけであります。

したがいまして、一般論として、お尋ねのような活動にテロ等準備罪が適用されることはないと、総理と同じくこのように考える次第であります。

糸数慶子君

分かりました。

では次に、個別具体的にお伺いしたいと思います。

まず、この法案の中の計画についてでありますが、今回の法案では、かつての法案で共謀とされていた行為を計画と言い換えられています。これは、四月十九日、衆議院法務委員会で林刑事局長は、計画という言葉を用いることによりまして、テロ等準備罪における合意というものは、例えば現行法上の共同正犯の成立要件である共謀とは異なって、犯行に関する指揮命令や任務の分担を含めて具体的かつ現実的に合意することが必要であるというような意味内容が明らかになるものと考えておりますというふうに答弁をしていらっしゃいます。

そこで、政府参考人に伺いますが、共謀と計画は意味内容が違うという理解でよろしいでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

まず、今、共謀と計画と言われました。計画の方は、このテロ等準備罪における計画でございます。一方で、共謀というものについては、かつての組織的犯罪の共謀罪における共謀という共謀もございますが、一方で、現行の刑法の体系で認められております共謀共同正犯という共謀という言葉等もございます。

それらの違いで申し上げれば、組織的犯罪の共謀罪もテロ等準備罪の計画における計画も、これは組織性を持った合意、共謀、こういったものを内容としているものでございまして、共謀共同正犯という意味での共謀、これについては組織性を全く前提としておりませんので、その意味では意味内容は異なると思います。

その上で、では、かつての組織的犯罪の共謀罪における共謀と、このテロ等準備罪における計画の意味内容はどうなのかと問われますれば、まず、テロ等準備罪における計画というのは、組織的犯罪集団の構成員らが組織的犯罪集団が関与する一定の重大な犯罪の遂行を具体的かつ現実的に合意することをいいます。したがいまして、基本的に、この両者は、この意味内容としては組織性を持つという点で同じでございます。

ただ、かつての組織的犯罪の共謀罪の共謀というものについては、今回、テロ等準備罪においては組織的犯罪集団という要件を入れておりますので、かつての組織的犯罪共謀罪の共謀とは、組織的犯罪集団が関与するものかどうか、この点については、かつての共謀罪、組織的犯罪の共謀罪と異なっているということが言えると思います。

糸数慶子君

質問に端的にお答えいただきたいと思います。

計画という用語は日常用語として使用されている用語であり、国語辞典の大辞林では、「事を行うにあたり、その方法や手順などをあらかじめ考えること。」とあるわけです。犯罪とは関係がない行為も含む広い概念のように思われます。共謀よりも広い概念で、犯行に関する意味というような限定的な意味に解することはできないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

このテロ等準備罪の計画ということもこの条文の中で使われておりますので、条文に則してこの意味内容を確定する必要がございます。

それによりますと、テロ等準備罪の計画とは、組織的犯罪集団の構成員らが組織的犯罪集団が関与する一定の重大な犯罪の遂行を具体的かつ現実的に合意すること、これが計画の意味となります。これは、条文上、次のようになっていることからでございます。条文では、「次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者」、このように規定されておりますので、この計画が二人以上の者によって組織的犯罪集団が関与する一定な重大な犯罪の遂行を具体的かつ現実的に合意すると、こういった意味内容になるということは明らかであると考えておるところでございます。

糸数慶子君

林刑事局長は、組織的犯罪集団による犯罪の実行が合意として、指揮命令や任務の分担を含めて具体的かつ現実的に合意することが必要であることが条文上も明確になるように、それにふさわしい用語として今回は計画という言葉を用いるということにいたしましたと説明されていますが、先ほど述べましたように、計画という日本語の意味の中にはそのような意味はないのではないでしょうか。どうして計画という用語に指揮命令や任務の分担を含めて具体的かつ現実的に合意するとその意味を読み込むことができると考えていらっしゃるのか、お伺いいたします。

政府参考人(林眞琴君)

テロ等準備罪における計画、すなわちこの犯罪実行に向けての意思の合致、これにつきましては、条文の規定からその意思の合致の対象は次のようになっております。すなわち、組織的犯罪集団の団体の活動として、一定の重大な犯罪を実行するための組織により行われるものの遂行についてこれを二人以上で合意するということが、このテロ等準備罪の中で、その計画として、その意思の合致の内容として掲げられております。

したがいまして、この中でいう組織により行われるものの遂行について二人以上で合意ということとなりますと、この組織自体は次のように定義されております。指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体、これをいうこととなっておりますので、こうした組織によって行われるものの遂行について二人以上で合意をするということになりますと、この計画の内容には指揮命令や任務の分担というものが、内容が含まれるということになると考えております。

糸数慶子君

刑法を含む刑事法で、処罰される対象の行為として計画というその用語を使った法律はあるでしょうか。ある場合には、その法律名、罪名を明らかにしていただきたい。

政府参考人(林眞琴君)

刑事罰則におきまして、処罰の対象となる行為として計画という語を、言葉を用いた例は承知しておりません。

糸数慶子君

共謀というその用語については、二〇〇五年における政府案の審議において、共謀共同正犯における共謀と同じ意味であることが当時の大林刑事局長から明らかにされました。共謀共同正犯における判例の積み重ねがあることから、その意味内容は明確でした。ところが、これまで刑事法で使われたことがない計画という用語を使用するとしたら、どういう行為が計画になるのかについては、過去の判例がないことから不明確になるのではないでしょうか。御見解を伺います。

政府参考人(林眞琴君)

テロ等準備罪における計画とは、組織的犯罪集団の構成員らが組織的犯罪集団が関与する特定の犯罪を実行することについて具体的かつ現実的な合意をするということをいいます。すなわち、計画は、まず特定の犯罪を実行することについての具体的かつ現実的な合意である点、これについては既存のにも共謀罪がございます、あるいは陰謀罪がございます。その場合の共謀や陰謀と同じでございます。また、組織的犯罪集団の関与の意義につきましても、明文で、組織的犯罪集団の団体の活動として、一定の重大な犯罪に当たる行為を実行するための組織により行われるものなどと定めておりますので、その点におきましても明確性に欠けるところはないと考えます。

したがいまして、御指摘のように、計画の方が共謀よりもその意味内容が不明確になるということはないと考えております。

糸数慶子君

今回のこの法案の計画は、かつての政府案の共謀とは全く異なる概念であるということでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

テロ等準備罪による計画とは、組織的犯罪集団の構成員らが組織的犯罪集団が関与する一定の重大な犯罪の遂行を具体的かつ現実的に合意することをいいます。

したがいまして、基本的に両者同じでございますが、かつての組織的犯罪の共謀罪の共謀とは、今回は組織的犯罪集団が関与するものであるか否かという点においては異なるものでございます。

糸数慶子君

かつての政府案で使われていた共謀については、共謀共同正犯における共謀と同じ意味であるとして、共謀共同正犯についての判例が認めていた黙示の共謀、すなわち、言葉は交わさなくても、目くばせでも共謀が成立すると当時の南野法務大臣や大林局長は認めていました。

今回の計画について、言葉を交わさなくてもこの黙示の計画が成立することはあるのでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

テロ等準備罪の計画といいますのは、その対象犯罪に当たる行為で、組織的犯罪集団の団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行、こういったものについて具体的かつ現実的な合意をすることを意味します。その性質上、綿密な打合せ等を通じた十分な意思疎通が必要となるものでございまして、このような計画が黙示的に成立することは考え難いと考えております。

糸数慶子君

この共謀共同正犯については、例えばAとBが共謀し、その後にBとCが共謀し、その後にCとDが共謀すれば、AからDの全ての者が共謀したことになるという順次共謀が認められていますが、今回の法案の計画についても順次計画ということが認められるのでしょうか、伺います。

政府参考人(林眞琴君)

このテロ等準備罪の計画におきましても、これは組織的犯罪集団の関与する重大な犯罪の遂行について具体的かつ現実的な合意をすることが必要でございますけれども、このような計画について、計画者が一堂に会して行わなくても、計画者が順次話し合い、合意するということによってもこの計画は成立し得ると考えます。

したがいまして、順次の合意によりテロ等準備罪の計画が成立することはあり得りますが、その内容は当然、指揮命令系統や任務の分担を含む具体的かつ現実的なものであることは必要であることは言うまでもございません。

糸数慶子君

黙示の計画や順次計画を認めるのであれば、あえて計画という用語を使わないで共謀という用語を使った方がその意味内容は明確になるのではないでしょうか。あえて計画という用語を使用することで、処罰の対象となる行為を共謀よりも曖昧にしてしまい、捜査機関などの恣意的な解釈の余地を残すことになるのではないでしょうか、伺います。

政府参考人(林眞琴君)

今回のテロ等準備罪における計画が、共謀という概念、語を使った場合に比べて不明確になるという御指摘については、そうではないということを先ほど申し上げました。

その上で、今回、共謀という概念、言葉を使っておらず、計画といった言葉を使っておりますのは、共謀という概念の中には、先ほど申し上げましたように、共謀共同正犯、刑法における共謀共同正犯の共謀というものがございます。これについては組織性の要件を持たない共謀でございます。また、現行で存在している共謀罪における共謀というものについても、必ずしも組織的な要件を持たない共謀でございます。

今回、組織的犯罪集団というのを法文の中で明示して、その中での合意を処罰すると。合意を処罰するということでの用語を使うに当たりましては、この組織的な要件を持たない共謀ということではなく、今回、計画という言葉を使ったということでございます。

糸数慶子君

そうですね、このことについてはまた後ほど細かく伺いたいと思います。

計画罪の罪数関係について伺います。

政府は、今回の法案について、国連の組織犯罪防止条約を批准する、そのために必要であるとし、同条約五条は、重大な犯罪についていわゆる共謀罪か参加罪かのそのいずれかを立法することを求めています。今回の法案は英米法にあるいわゆる共謀罪を採用したものという理解でよろしいでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

国際組織犯罪防止条約の第五条の1(a)は、重大な犯罪の合意又は組織的犯罪集団の活動への参加の少なくとも一方を、その未遂又は既遂とは別に犯罪化することを義務付けております。そして、今回新設するテロ等準備罪は、国際組織犯罪防止条約第五条1の(a)を担保するために、この中の重大な犯罪の合意というものを犯罪化するものでございます。

糸数慶子君

共謀罪は英米法で認められているものですが、英米法では共謀罪というのは、その犯罪が実際に実行された場合に成立する犯罪とは別個に成立する、すなわち独立罪として処罰するとされています。このことは、いわゆるロス疑惑事件の被疑者とされた方が、我が国において殺人罪で無罪が確定した後に、サイパンにいた際にアメリカのロサンゼルス警察による殺人の共謀罪容疑で逮捕されたことからも分かります。その際にも二重処罰になるかどうかが議論になりました。

さて、今回の法案の計画罪については、独立罪としてその計画を実行した場合に成立する犯罪とは別個に二罪として処罰されるのか、それとも実行して成立する本犯に吸収されるのか、どちらになるのでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

テロ等準備罪は犯罪の実行の着手前の行為を処罰するものでありまして、固有の保護法益はなく、専ら計画をした犯罪により保護される法益の保護に資するものでございます。そのため、計画をした犯罪が実行された場合、この場合にはテロ等準備罪を処罰する必要性は認められませんので、結果的に実行された犯罪が処罰されるときはこれに吸収されると考えております。

糸数慶子君

我が国には刑法七十八条の内乱陰謀罪など既に二十一の陰謀罪、共謀罪があるわけですが、これについて本犯に吸収されるというような解釈がされてきましたでしょうか、その点について判示した判例はあるのでしょうか、伺います。

政府参考人(林眞琴君)

まず、現行法の共謀罪、陰謀罪についての罪数関係については、その対象となった犯罪が既遂になった場合にはその既遂罪の方に吸収されると、このように解されていると理解しております。

この点を直接判示した裁判例は承知しておりませんが、一方で予備罪について次のような判例がございます。予備罪について、殺人の予備をした後に殺人の実行に着手した場合には殺人予備は殺人罪に吸収されると、こういった裁判例が存在すると認識しております。

糸数慶子君

かつての政府案に対する自民党、公明党の修正試案には、共謀した者がその共謀に係る罪を犯したときは、当該罪を定めた規定により処罰され、共謀罪の規定により処罰されないことに留意するという規定がありましたが、法律上、このような趣旨を明示する必要があるとはお考えになりませんでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

先ほど申し上げましたように、テロ等準備罪は犯罪の実行の着手前の行為を処罰するものでございまして、固有の保護法益はございません。専ら計画をした犯罪により保護される法益の保護に資するものでございますので、計画をした犯罪が実行された場合には、明文の規定をまつまでもなく、解釈上当然に、実行された犯罪が処罰されるときはこれに吸収されると解されております。したがいまして、お尋ねのような規定を置く必要はないと考えております。

糸数慶子君

今回、この計画罪の対象となる二百七十七のその罪の中には、既遂犯、未遂犯、予備罪がそれぞれ処罰されている犯罪もありますが、それ以外に、既遂犯と未遂犯は処罰されるけれども予備罪は処罰されていない犯罪類型や、既遂犯は処罰されているけれども未遂犯や予備罪も処罰されていない犯罪類型が多数あります。

例えば、二百七十七のその罪に入っている刑法百六十九条の偽証罪では、既遂犯は処罰されますが、未遂犯も予備罪も処罰されません。今回の法案によると偽証罪の計画罪も処罰されることになりますが、吸収されるとしたら、偽証罪の既遂犯に吸収されることになるのでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

委員御指摘のとおり、偽証が計画された場合において計画された偽証が実行された場合、この場合は、偽証に係るテロ等準備罪は偽証罪に吸収されることとなります。

糸数慶子君

その場合、偽証について計画をしてその準備行為をした場合で、それを更に具体的な準備行為をしたり実行に着手した場合でも結局既遂に至らない場合には、予備罪も未遂犯も処罰されず、計画罪だけが成立するということになるのでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

委員御指摘のとおり、先ほど申し上げましたように、計画された偽証が実行されたときには、偽証に係るテロ等準備罪は偽証罪に吸収されることとなるわけでございますけれども、計画された偽証が実行され偽証罪が成立する前の段階においては、偽証に係るテロ等準備罪が成立することとなります。

糸数慶子君

偽証罪の既遂犯が成立する場合にだけ偽証の計画罪が吸収されて、偽証罪の一罪だけが成立するということになるのでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

計画に係る偽証が既遂に達した場合は、偽証罪の既遂罪、偽証既遂罪の一罪だけが、一罪が成立することとなります。

糸数慶子君

現行法上、既遂犯しか処罰せず、未遂も予備も処罰していないというのは、未遂よりも前の行為を処罰する必要はないという観点から処罰規定が設けられていなかったと考えられます。そのような犯罪についても今回の法案では計画罪が新設されることになりますが、それは、従来それぞれの処罰規定が示していた未遂より前の行為を処罰する必要はないという考えに反するのではないでしょうか、伺います。

政府参考人(林眞琴君)

今回、テロ等準備罪を処罰する考え方でございますが、組織的犯罪集団が関与して一定の重大な犯罪の計画行為に加えて実行準備行為が行われた場合においては、その計画をした犯罪が実行される可能性が高い上に、一たび実行されると重大な結果が生ずることが多く、特に悪質で違法性が高く、未然防止の必要性が高いことから、未遂罪や予備罪が処罰されていない犯罪類型にありましてもテロ等準備罪として処罰するものが適当であると考えていることによるものでございます。

このように、テロ等準備罪は、組織的犯罪集団が関与する重大犯罪の計画行為の危険性に着目したものでございます。その対象犯罪については、組織的犯罪集団が関与しない個人の行為も対象となる単なる予備罪や未遂罪が設けられている罪であるかどうかといった問題とは区別して考えるべきでございまして、予備罪や未遂罪が設けられていない罪を対象犯罪とすることが不整合であるということの御指摘は当たらないと考えております。

糸数慶子君

時間が参りましたので終わりますが、通告いたしました質問は次にさせていただきたいと思います。

以上です。ありがとうございました。