国政報告

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共謀罪 政府による国連報告者を貶めるような発言について懸念、計画罪と中止犯との関係など

第193回国会 2017年6月1日 法務委員会

<午前 参考人質疑>

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。よろしくお願いいたします。

本日は、参考人の皆様には大変貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。

まず、松宮参考人にお伺いをしたいと思います。計画罪とそれから中止犯との関係についてであります。

現行法上、刑法の窃盗罪については予備罪が設けられていませんので、窃盗することについて共謀しても、共謀した者のうち一人以上の者の行為が予備行為にとどまって、そして窃盗の実行の着手にまで至らなかった場合には、これ、不可罰となりますね。今回の法案では、窃盗罪も二百七十七の対象犯罪に含まれていますので、窃盗について計画をし、そのうちの一人が準備行為をすれば二年以下の懲役又は禁錮の刑が科されるという、そのような理解でよろしいでしょうか。この点についてどうお考えか、お伺いいたします。

参考人(松宮孝明君)

刑事局長の答弁の中に、実行の準備前、準備行為前にやめたのであれば適用はないですよというお話があったかと思うんです。しかし、今の御質問は、準備行為がなされたが実行の着手に行っていないという段階ですよね。それは、もちろんこの法案の条文そのまま読めば、二年以下の懲役で処罰できるということになりまして、刑の免除の可能性がなくなります。

糸数慶子君

窃盗について共謀した者のうち一人が実行に着手した後にその行為を中止すれば、窃盗の中止犯として刑法によって必要的に刑の軽減又は免除となるわけですね。ところが、本法案によりますと、その場合には既に窃盗の計画罪が成立していますから、自首しない限り刑の軽減又は免除を受けられなくなるということですね。

先ほども伺いましたけれども、政府の答弁で、計画罪は独立罪ではなく本犯に吸収されるということでした。そうであれば、窃盗の共謀をして実行に着手して中止した場合に、窃盗の計画罪は窃盗の未遂罪に吸収されることになるわけですね。窃盗の共謀をした場合には実行に着手してから中止した方が有利に扱われることになるわけですが、これは中止犯に恩恵を与えてできるだけ犯罪の既遂に至らないようにしようという刑事政策的な観点から見ておかしな結論になるのではないかというふうに思いますけど、松宮参考人はどのようにお考えでしょうか。

参考人(松宮孝明君)

御指摘のとおりだと思います。少なくとも条文上はそうなりますので、実行に着手して中止した方が刑の免除の可能性が出てくるというおかしなことになります。

他方、先ほど私、凶器準備集合罪の例を挙げたんですけど、凶器準備集合罪は法案審議段階ではその後の傷害罪などに吸収されるのではないかという議論があったんですが、裁判所は独立罪だという解釈を取りましたので、国会でそのような答弁がなされても裁判所がその答弁どおりに解釈してくれるという保証はありません。

糸数慶子君

刑法の傷害罪には、この未遂犯を処罰する規定はありません。したがって、傷害行為をしようとして実行の着手をした者がその行為を中止した場合には傷害罪は不成立となり、不可罰となります。ところが、今回の法案では、傷害罪も二百七十七の対象犯罪に含まれているので、傷害行為をすることを計画をして、そのうちの一人が実行の着手をした後に中止した場合にはこの傷害の計画罪が成立し、自首しない限り刑の軽減や免除を受けることはできず、五年以下の懲役又は禁錮の刑が科せられるということになるわけですが、この点について改めて松宮参考人の御見解を伺います。

参考人(松宮孝明君)

それも御指摘のとおりです。例えば、暴行によらない傷害、薬物などによって身体障害を引き起こそうとして薬を盛ったが、直前に全員で反省してやめたと、組織的に行ったけど全員反省してやめたというような場合について、もちろん傷害未遂罪がございませんので中止未遂規定もございませんが、共謀罪は残りますから五年以下の懲役であって刑の免除の可能性はないということになります。

糸数慶子君

計画罪の対象犯罪であるこの二百七十七の罪の選別に当たってこのような不都合が生じないかどうかという点について、松宮参考人はきちんと検討されたというふうに思われるでしょうか。

参考人(松宮孝明君)

今御指摘いただいた点については、少なくとも法案を読む限りきちんと検討されているとは到底思えません。

糸数慶子君

ただいま四点について伺ったわけですが、伺った以外にも、この計画罪と中止犯との関係で補足することがもしありましたら、計画罪と、一昨日、罪数関係についても質問したんですけど、御意見がございましたらお伺いをしたいと思います。

参考人(松宮孝明君)

裁判所を含めてきちんと実務を拘束するのであれば、そのルールは全て法律に書くべきです。したがって、罪数関係についてどうなるかということについての明記が法案には必要でしょうし、実際に結果を起こすまでに全員が中止をしたというような場合について有利な取扱いをするということを明記しないと、犯罪を反省してやめさせる、中止させるという刑法の中止犯規定の趣旨が没却されてしまいます。

したがって、例えば、例えばですよ、私、それ賛成しているわけではありませんが、この法案の中に、当該犯罪の既遂に至るまでに中止した場合については刑を必要的に減免するというような規定も当然考慮されてよかったのではないかというふうに考えております。

糸数慶子君

それでは、新倉参考人にお伺いしたいと思います。

先ほどもお話がございましたけれども、国連の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏の公開書簡のコピーの件なんですけれど、これ、安倍晋三首相に宛てた五月十八日付け書簡におきましては、これ国連人権高等弁務官事務所と明記されて国連のホームページで公開されています。この共謀罪法案について、やはり計画や準備行為の文言が抽象的で、恣意的に使用される懸念があり、プライバシーや表現の自由に関し国連の国際人権規約に抵触するおそれがあるというふうに指摘をされた内容であります。

この書簡に対して日本政府は、外務省を通じて抗議をした上で、三十日には、国連の見解ではない、誤解に基づくというふうに考えられる点も多いとする答弁書を閣議決定をしております。

安倍首相も参議院の本会議で、著しくそれはもうバランスを欠き、客観的であるべき専門家の振る舞いとは言い難いというふうにケナタッチ氏を個人的に攻撃をしておりますけれども、改めまして、やはりこのケナタッチ氏、日本も理事国を務める国連人権理事会から任命された特別報告者であります。このことに対して、日本の今の対応に対する状況は国際社会で通用するかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。

参考人(新倉修君)

通用するかと言われれば通用し難いと。しかし、国際社会というのはやっぱり外交ですから、面と向かって面罵するとか手袋を投げ付けるなんということは、これはもう戦争を覚悟しなきゃできないわけですよ。そういう意味では、にこにこ笑いながらテーブルの下で足を蹴り合うという例え話がありますけれども、そういうふうに微妙な関係ですよね。

だけど、やっぱり日本のやっていることは大国としてはふさわしくないといううわさといいますか評判といいますか、そういうのは、もう特に国連の職員はそういうことを非常に、マナーがいいからそういうことをめったに口にしませんけれども、国際活動をやっているNGOの間では、日本のやっていることは非常に、何といいますか、不誠実というふうに受け取られちゃうわけですよね。

これはこの委員会でも多分出た話だと思いますけれども、本会議で出た話かもしれませんけれども、要するに、日本が人権理事国に立候補するときに、特別報告者には協力するということをちゃんと誓約しているわけですよね。にもかかわらず、それを忘れたかのように特別報告者なんというのは眼中にないみたいな発言をするということは、これはもう言動不一致の最たるものでありまして、そういうことはやっぱり余りよろしからないというふうに私も思います。

糸数慶子君

今、ケナタッチ氏だけではなくて、アメリカの弁護士のローレンス・レペタ氏も、実は今回提案されている法案というのは、読んで分かる以上に深刻な問題をはらんでいるというふうに指摘をされています。

私は、先日のこの委員会におきまして安倍総理に御質問いたしました。実は、辺野古の基地の座込みをしている反対運動をしている人たちは、実際にこの法案、共謀罪の対象になるのかどうかということを伺いましたら、これは地域の負担軽減と自然環境の保全が目的で、一定の重大犯罪等の実行を目的に構成員が結合しているとは考え難いので、このテロ等準備罪は成立しないというふうにおっしゃっているんです。

でもしかし、現実には、そういう思いを持って運動している沖縄の山城博治さんが、実は百五十日以上も不当に逮捕、拘束をされたという、そのことがありまして、今回、国際人権規約の第九条で、この問題に関しては恣意的な逮捕と長期勾留を禁じていることに反するのではないかということで、山城さんは今月六月、実際に国連、スイスのジュネーブに行ってこのことをきちんと訴えることになっておりますけれども、この件に関して今のこの法案、本当に私たちに与えられた憲法で保障された内心の自由、あるいは一般の市民がこうやって活動することを規制をすることに大変大きな危惧を持っているんですけれども、この山城さんの今回の国連で訴えることに対する御感想、ありましたらお伺いしたいと思います。

委員長(秋野公造君)

新倉参考人でよろしいですか。

糸数慶子君

新倉参考人に伺います。

参考人(新倉修君)

訴えることはもっともだと私は思いますし、私がもし彼の立場だったら私も同じことを多分しただろうというふうに思いますね。

もう少しはっきり言えば、やっぱり、こういう問題であれだけ長期に人身拘束するというのは、国際社会のルールからいうと、とても信じられないというか、とても野蛮だという評価になるわけですよね。そういうことはできるだけやっぱり国内で防ぎましょうということで、国連ではパリ原則ということで、国内の人権機関でそういう人権侵害がないことをちゃんとチェックしていらっしゃいと、国内での救済手段が尽くされてどうしても解決付かないときには国際社会がそれを引き受けるから、個人通報制でそういう国際人権条約に関する履行審査委員会に訴えてくださいと、そういう仕組みを持っているわけですよね。そういう仕組みを日本はもうあえて、そんなもの日本には要らないという態度をずっと取り続けているわけですよ。

そういう中で、実際こんな人権侵害ありましたということを日本人が行って国際社会で言ったら、これは日本政府としては一体どういう、何といいますか、顔をしたらいいのかという非常に深刻な問題なんですよね。だから、そういうやっぱり、何といいますか、人権侵害があってもいいんだというような、言わんばかりの態度はやっぱり改めるべきじゃないかというふうに思います。

糸数慶子君

時間になりましたので終わりにしたいと思いますが、今おっしゃっていただきましたように、やはり米国の警察の方でも、仮に逮捕しても、この程度の山城さんのような軽微な罪であれば、その日のうちに釈放してもいいというふうにおっしゃられています。そういう意味で、今の御答弁に大変心強く思います。

以上です。ありがとうございました。

<午後 対政府質疑>

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。

まず、前回通告をしてできなかった課題についてお伺いをいたします。

今回、計画罪の対象とされる二百七十七の罪の中には、既遂犯しか処罰されず、未遂犯も予備罪も処罰されない犯罪類型がかなり多く含まれていますが、それらの犯罪類型について、計画罪は処罰するという今回の法案は、これまでの法律との整合性を欠いていると考えられますが、二百七十七の罪を選別する際にそのような観点は考慮されたのでしょうか。されなかった場合、どうして考慮されなかったのか、お伺いいたします。

政府参考人(林眞琴君)

テロ等準備罪の対象犯罪は、死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪のうちで、組織的犯罪集団が実行、計画することが現実的に想定される罪、これを対象犯罪として選択いたしました。

組織的犯罪集団が関与する重大な犯罪の計画行為に加えまして実行準備行為が行われた場合、その行為は、その計画した犯罪が実行される可能性が高い上に、一たび実行されると重大な結果が生ずることが多く、特に悪質で違法性が高く、未然防止の必要性が高いと考えられます。

したがいまして、組織的犯罪集団が実行、計画することが現実的に想定される罪につきましては、未遂罪や予備罪が処罰されない犯罪類型でありましてもテロ等準備罪として処罰するものとするのが適当であると考えたことがその理由でございます。

糸数慶子君

国際組織犯罪防止条約、これは、各国が国内法化する際のガイドラインとして作成された立法ガイドのパラグラフ四十三には、国内法の起草者は新しい法が国内の法的伝統、原則及び基本法と合致することを確保しなければならないというふうにされておりますが、計画罪の立案に当たっては、先ほどから述べている現在ある刑事法との整合性を考えるということは必要なことではないでしょうか、伺います。

政府参考人(林眞琴君)

現行の刑事法との整合性についてお答えいたします。

まず、先ほどの点にも関連いたしますが、我が国の刑事法におきましては、特に重大な犯罪や取締り上必要がある犯罪については、予備罪や共謀罪など、実行の着手前の行為をも処罰しております。テロ等準備罪も、先ほど申し上げましたように、その処罰の必要性、危険性に着目して創設するものでございますので、こういった点において我が国の刑事法における刑罰の基本的な定め方に整合するものと考えております。

また、刑事法の基本原則との整合性について更に申し上げれば、まず、テロ等準備罪は、処罰の対象となる行為と刑罰とを明文で規定をしておりまして、罪刑法定主義に反するものではございません。特に組織的犯罪集団に限られることを明文で規定するとともに、対象犯罪についても限定をし、それを別表に掲げております。処罰範囲は一層明確になっております。また、犯罪の計画行為だけでは処罰されず、実行準備行為があって初めて処罰対象とすることにして、処罰範囲も限定することとしております。こうしたことから、罪刑法定主義の趣旨を一層実現するものとなっているものと考えます。

さらには、テロ等準備罪は、刑法の発動は全ての違法行為を対象とすべきものではなく刑罰は必要やむを得ない場合に限って適用すべきであるといういわゆる謙抑主義という考え方がございますが、この謙抑主義にも反しないと考えております。テロ等準備罪も全ての犯罪計画を広く一般的に処罰するものではなくて、組織的犯罪集団が関与する一定の重大な犯罪の計画行為、さらに、それに加えて実行準備行為が行われた場合に限って処罰の対象としているものでございますので、この謙抑主義に反するものでもないと考えております。

糸数慶子君

本日は岸田大臣に御出席をいただきました。久しぶりに大臣に質問いたしますが、その前に一言申し上げておきたいと思います。

岸田大臣が日頃から外交に御尽力をされていらっしゃる、そして諸外国においてもその信頼関係を築いていらっしゃる、そのことには大変敬意を表します。

日本は人権の分野において多大な国際貢献をしてきたというふうに認識をしております。例えば、国連の人権機関に日本は多くの委員を輩出しております。昨年は障害者権利委員会、そして子どもの権利委員会において日本の候補がそれぞれ当選をし、今年から新たに委員として御活躍をいただいております。私、昨年の二月、傍聴いたしましたが、女性差別撤廃条約日本政府報告審査会では、日本の方から当時の委員長、林陽子委員長に対して心のこもった敬意と、そして輩出国への謝意が発言をした全ての委員から述べられておりました。

ところが、一方で、国連の報告者に対する一連のこの政府の発言についてでありますが、これは国内外から疑問視する声が上がっています。一昨日、本日の委員会でも仁比委員からも指摘がありましたが、三年前に日本が国連人権理事会理事国選挙に立候補した際の公約、これは、特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のため今後もしっかりと協力していくという発言があるわけですね。こういう発言があるにもかかわらず、正反対の言動が政府首脳から出ていることを大変憂慮しております。

情報通信システムが発達した現代では、政府や政治家などの言動は瞬時に世界中に広がり、その分析と評価はNGOなども常に行っているため、恣意的な利用はすぐに批判にさらされることになります。最近の安倍総理や菅官房長官、あるいは政治家から発せられる国連人権機関の委員等に対する事実に基づかない批判や感情的な発言が日本の信頼と国益を損ねているということを強く申し上げて、質問に入りたいと思います。

まず、国連条約との関係についてでありますが、これまで外務省は、国連の組織犯罪防止条約を批准するために、同条約五条が求める全ての重大犯罪に共謀罪を設ける必要があるという立場だったと思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(岸田文雄君)

TOC条約五条の1(a)(1)ですか、これにおいては、締約国に対し、重大な犯罪、すなわち長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪の合意の犯罪化を義務付けつつ、国内法上求められるときは組織的な犯罪集団が関与するものとの要件を付すこと、これを認めている。これが条約のありようだと理解しております。

糸数慶子君

今大臣がお答えになりましたが、同条約が重大な犯罪として定義する長期四年以上の懲役、禁錮の罪の全てについて共謀罪を新設する必要があるということで、その対象は、二〇〇五年当時で六百十九、現在では六百七十六あるということでよろしいでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

平成十七年四月一日の時点におきまして、国際組織犯罪防止条約上重大な犯罪とされる死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪は、犯罪行為の態様に着目して考えます、数えますと六百十九個でありまして、また、性質上その共謀の対象とならない過失犯及び未遂犯に係るものを除きますとその数は六百十五個でございました。

他方で、現在、国際組織犯罪防止条約上重大な犯罪とされている罪につきましては、法務省におきまして改めて数えますと、本法案により新設することとしている証人等買収罪を除きまして六百七十六個でございます。

糸数慶子君

今回、外務省はこれまでの方針を変更して、対象犯罪を組織的犯罪集団が現実的に実行すると考えられる犯罪に限定することが可能という立場に変更したということでしょうか。

国務大臣(岸田文雄君)

まず、条約の解釈あるいは立場の変更はございません。

過去の法案においては、この組織的犯罪集団という文言やこの定義が明文で定められていなかったことを前提に、対象犯罪を限定すること、これを行ってこなかったわけですが、その後、国会の審議を経て、より一般の方がこの犯罪の対象にならないことを明確化することが必要である等の認識の下にこの法案を吟味し、そしてこの条約のオプションをしっかり活用することで、法文上この犯罪主体が組織的犯罪集団に限られることを明記した上で、対象犯罪についても組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される重大な犯罪二百七十七個に限定する、このようにしたものであると認識をしております。

糸数慶子君

これは大きな方針変更だと思われますが、どうして今回そのような変更をすることになったのでしょうか、伺います。

国務大臣(岸田文雄君)

まず、基本的な条約の解釈ですとか立場は全く変わっておりません。そして、どうしてそういった対応を取ったかということにつきましては、御案内のとおり、このTOC条約の国内担保法の議論、これまでも何回も国会の方で御審議いただき、長い期間を掛けていろんな議論をいただいてきました。その議論の中でいただいた様々な指摘を踏まえて、政府としても、また新たな法律を用意したわけであります。

この指摘の中で特に強く指摘されたのは、一般の方々が対象になるのではないか、こういった点でありました。この点を念頭に新たな法案を準備したわけですが、その際に、条約の第五条に定められている二つのオプション、これを活用することによって一般の方々が対象にならないことをより明確化することができるのではないか、こういったことで新しいこの法案、今御審議いただいている法案を準備した次第であります。

どうして先ほどのような対応が変わったかという理由につきましては、今申し上げたような経緯を経て政府として慎重に検討をし、そして結果として、今御審議いただいている法案を提出させていただいた、こういったことが理由であります。

糸数慶子君

国連の国際組織犯罪防止条約は、その起草段階において、日本政府は、本条約五条に相当する規定について、我が国の法体系に反するとして当初反対していたと承知しておりますが、間違いないでしょうか。

国務大臣(岸田文雄君)

国際組織犯罪防止条約が国連総会によって承認されるその前の交渉段階での話について御指摘をいただきました。

その交渉段階において、条約の案文、かなり様々な議論が行われ、変化をしていきました。そして、その中にあって、交渉の初期における案文においては、この重大な犯罪の合意罪について組織的な犯罪集団が関与するものという要件を付すこと、これは認められておりませんでした。また、重大な犯罪の範囲も定まっておりませんでした。単に重大な犯罪を行うことの合意、これを処罰するというような内容のものでありました。こうした初期の段階における案文に対して、我が国として、そのまま受け入れられない旨意見を述べてきたわけです。そして、この重大な犯罪の合意罪について組織的な犯罪集団の関与するものという要件を加えることを提案を行った次第であります。

委員の御指摘になられましたその我が国の対応というのは、今申し上げました経緯の中での発言を御指摘されたものだと認識をいたします。

糸数慶子君

日本政府は、その後、これは各国が立法する際に、組織的犯罪集団の関与と、さらに犯罪行為を推進する行為というこの二つのオプションが入ることになったことから本条約に賛成して加入することを決めたというふうに理解しておりますが、それでよろしいのでしょうか。

国務大臣(岸田文雄君)

今申し上げたように、我が国は、このTOC条約交渉の初期の段階における当時の案文、これはこのまま受け入れられない、こういった意見を述べて、重大な犯罪の合意罪について、組織的な犯罪集団が関与するものという要件を加える、こういった提案を行いました。そして、議論の結果、重大な犯罪の合意罪について、我が国の提案に基づいて、組織的な犯罪集団が関与するものという要件が付された次第であります。また、累次の議論の結果、重大な犯罪の範囲も明確化され、長期四年以上の罪、このようにされたわけであります。

こうした議論の結果を踏まえて、政府としては、この条約、コンセンサスによる採択に参加をしたというのが経緯であります。

糸数慶子君

我が国の法体系に反するとして反対していた日本政府が、どうして二つのオプションが加わることになったから賛成することになったのか、御説明をいただきたいと思います。この二つのオプションが入ったから我が国の法体系に反しないことになったのでしょうか、お伺いいたします。

国務大臣(岸田文雄君)

今申し上げたように、我が国としては、その議論の中で、この重大な犯罪の合意罪について、組織的な犯罪集団が関与するものという要件を加えることを提案いたしました。そして、議論の結果、重大な犯罪の合意罪について、我が国の提案に基づいて、組織的な犯罪集団が関与するものという要件を付すことができる、このようになり、そして重大な犯罪の範囲についても明確化された、こういった議論の経緯を踏まえてコンセンサスの採択に参加した、これが我が国の対応であり、考え方であります。

糸数慶子君

ところが、二〇〇三年以降、国会に提出されたかつての共謀罪を新設する組織犯罪処罰法改正案は、この二つのオプション、いずれも使わない内容だったと思いますが、いかがでしょうか。

政府参考人(林眞琴君)

TOC条約で認められている二つのオプションについては、かつての組織的な犯罪の共謀罪におきましては、この二つのオプションのうち組織的な犯罪集団が関与するものというオプションにつきましては、重大な犯罪の合意が処罰される範囲を適正なものとするために用いることとしておりました。

その際、我が国では既に、組織的な犯罪集団が関与する犯罪の高度の違法性に鑑みまして、組織的犯罪処罰法が組織的な対応に着目した要件と不正権益関連目的に着目した要件という二つの観点から特別の法規制を講じていたところから、組織的な犯罪集団の関与ということにつきましても、この当時の既存の国内法との整合性を保って、この二つの観点から要件を定めるのが適切であると考えました。

そこで、条約の言うところの組織的な犯罪集団が関与するものというオプションにつきましては、その条約の文言をそのまま用いるのではなく、団体の活動として犯罪行為を実行するための組織により行われるものというもの、さらには、第三条第二項に規定する目的で行われるものというのの遂行を共謀した者を処罰すると、そういう形で定めていたわけでございます。

他方で、もう一つのオプションでありますところの合意の内容を推進するための行為を伴うものという条約のオプションについては、今申し上げたように、既に厳格な組織性の要件が付せられているので処罰範囲は不当に広がることはないとその当時考えまして、こちら側のオプションについては用いていなかったというものでございます。

糸数慶子君

それでは、日本政府は、この二つのオプションが加わったから我が国の法体系に反することはなくなったはずなのに、その二つのオプションをいずれも使わない組織犯罪処罰法の改正案を作ることになったのでしょうか、外務省はそれに対して意見を述べたのでしょうか、伺います。

政府参考人(飯島俊郎君)

お答えいたします。

過去の組織的な犯罪の共謀罪におきましても、本条約が国内法において付すことを認めております組織的な犯罪集団が関与するとの要件に対応するものとして、団体の活動として罪に当たる行為を実行するための組織によりとの要件を付しておりました。このように、過去の法案におきましても、本条約の義務を履行できるものであることを前提に、我が国の法制度との整合性を考慮しながら必要な範囲で立案をしたものでございます。

糸数慶子君

国連の国際組織犯罪防止条約は、二〇〇〇年十二月にこれはもうイタリアのパレルモで署名式が行われておりまして、日本政府も署名をしておりますが、それから十六年以上経過した今国会に提出された法案において、本条約五条の二つのオプションを使った法案が出されましたが、どうして十六年も、その二つのオプションを使おうと考えたのでしょうか。その対応は余りにも遅過ぎたのではないですか。

政府参考人(飯島俊郎君)

お答えいたします。

本法案の立案に当たりましては、一般の方々が処罰の対象とならないことを明確にするという観点から、本条約が認められるオプションを活用するという新しいアプローチでテロ等準備罪を立案いたしました。

すなわち、第一に、計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときとの要件を新たに付すことといたしました。これにより、計画行為に加え、計画をした犯罪を実行するための準備行為があったときに初めて処罰の対象となることとなりました。

第二に、法文上、犯罪主体が組織的犯罪集団に限られることを明記した上で、対象犯罪につきましても、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される重大な犯罪に限定することといたしました。

このことは、過去の国会審議等におきましていただきました様々な御指摘を踏まえ、政府として真摯に検討を重ねた結果であり、遅過ぎたということにはならないと考えております。

糸数慶子君

この条約については、当初は毎年、最近では二年に一度締約国会議が開かれておりますが、外務省からは毎回国費で職員を派遣して、オブザーバー資格で出席しているということでよろしいでしょうか。

政府参考人(飯島俊郎君)

お答えをいたします。

毎回オブザーバーとして締約国会合に出席しております。

糸数慶子君

いろいろ質問してまいりましたけれども、冒頭にも申し上げましたように、やはり国連において日本の国はかなり貢献をしているというふうに評価されております。

また一方で、ただいまのこの沖縄での大きな課題になっておりますけれども、沖縄の新基地建設の抗議行動を主導しております山城博治さんが長期的な勾留をされまして、これ、国際人権法を犯しているのではないかということを内外から多く批判されています。

国際人権規約の第九条で、今回のこのことは、恣意的な逮捕と長期勾留を禁じている、この山城さんの今の状況について、通告はしておりませんけれども、岸田大臣、人権を尊重するという立場から一言、今回の山城さんの勾留と、そして今度六月の十九日、国連、スイスのジュネーブにおきまして、人権に対する会議の中で山城さんが訴えをいたします、そのことについて一言、御存じでしたら御感想をお伺いしたいと思います。

国務大臣(岸田文雄君)

まず、基本的に我が国としまして、国連を重視しながら外交を進めていかなければならない、この認識はこれからも全く変わりません。そして、その中において人権という考え方、これは大変重要な考え方であり、我が国もこの人権を尊重する上でしっかりと貢献する取組を進めていかなければなりません。

ただ、個別のこの具体的な案件、事件については、これはまず基本的には国内法理に基づいてしっかりと法律に基づいて対応されるべきものであります。そのことは間違いないとは思いますが、具体的な案件について私の立場から何か申し上げるのは控えたいと思います。

糸数慶子君

時間が参りましたので終わるわけですが、今、この共謀罪法案提案されておりますけれども、過激なテロが行われる時代に、やはりこのテロ対策というのは確かに重要だと思います。ただ、やっぱり民主国家であれば、個人の自由を前提に治安の問題を考えなければいけないというふうに思います。

危ないからという理由で監視社会を進めるなら、これは民主主義自体がなくなってしまうのではないかということを強く申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

ありがとうございました。