国政報告

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北方領土問題 ※参考人質疑

第193回国会 2017年6月9日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子と申します。よろしくお願いいたします。

本日は、四人の参考人の方々には貴重な御意見を拝見させていただきまして、ありがとうございました。

順にお伺いをしたいと思います。最後ですので、ちょっと重なるところがあるかもしれませんが、よろしくお願いしたいと思います。

まず、長谷川参考人にお伺いいたしますが、この北方四島における共同経済活動に関する要望の中で、特に優先順位や期待が高いものをまずお述べいただきたいと思います。

参考人(長谷川俊輔君)

私ども、今、国に要望しているのが十分野で、項目にしますと百五十七の項目を提案していまして、まだそれに対しての回答は来ていないんですが、その十分野の中でも漁業、それから、先ほど海洋牧場の話がありましたが、海面養殖、観光、医療、水産加工、この五点が、根室市や北方領土の隣接地域は漁業が基幹産業のところが多いものですから、どうしても漁業を中心にこのような重点要望事項となっております。

糸数慶子君

脇参考人にお伺いいたします。

千島連盟が元島民の方々を対象に実施している援護対策事業の中で、戸籍、それから残置不動産相続、そして融資制度、この利用などについて、具体的にどのような相談が多く寄せられているのでしょうか、お伺いいたします。

参考人(脇紀美夫君)

今の御質問の中で、特に戸籍という部分では、今、戸籍を根室市役所で取り扱っていただいて、北方四島に本籍を移すとかというようなことは実際にやっていますね。

特に我々元島民の間で一番要望というか、今後課題になっているのは、融資制度の問題です。特に北方領土対策協会の融資制度の問題。これはどういうことかというと、いろいろ、修学資金であるとか、建物の建築資金であるとか、借入れできる制度にはなっているんですが、元島民、そしてその後継者一人に限定されているわけですよ、二世、三世が何人いようと。そうすると、家族の中でいろいろ問題が出てくるわけですね。元島民と一緒に住んでいたにもかかわらず、自分がその後継者というか融資の対象にならないという、そういう事例もあるわけですよ、現実に。したがって、これを何とか、元島民の子供、孫、要するに、民法に規定しているような相続の問題との整合性というか、必ずしも整合性にはならないんでしょうけれども、複数以上にしてほしいと、できれば全部にそういう権利を与えてほしいと、これが一番、今、千島連盟の中で問題になっている部分であります。

したがって、二世、三世に今後のそういう千島連盟の運営なり事業を委ねざるを得ないというような状況の中では、それも一つの大きな議題というか課題になっているということで、これを解決したいと。そのことによって二世、三世にも頑張っていただけるんだというふうに思っていますので、我々元島民はもう八十二歳、三歳となっていますから、しかし、これはもう時間がありませんけれども、先ほど猪木議員からもお話があったように、元気で粘り強く、諦めずに頑張っていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

糸数慶子君

ありがとうございました。

北方四島を事実上管轄するサハリン州政府と中央政府とのこの力関係がどのようになっているのか。これ、墓参やそれから自由訪問で、現地の出入域手続等においてロシア側の態度は硬化しているのではないかというふうに言われたりもいたしますが、これは中央政府の意向なのか、それとも現地が独自の路線を取っていると見るべきなのか、下斗米参考人、袴田参考人、お二人にお伺いいたします。

参考人(下斗米伸夫君)

糸数先生、どうもありがとうございます。

プーチン政権になって一番大きな、顕著な特色というのは、それまで地方政府が事実上野放しだったのを上からコントロールするというやり方でやってまいりました。ただ、極東地域全体がそうでございますけれども、この地域はやはりモスクワから遠過ぎる、それと同時に、やはり派遣できる中央政権のリソースが足りな過ぎるというようなこともございまして、とりわけサハリン政府はやはり、やや特殊な事情でございますが、エネルギー資源が豊富であること、もう一つは漁業関係の利害、これはもうお二人の方から御説明ございましたが、これが非常に特殊な形で日ロ関係に余り好意的でなかったという事情がございまして、その意味でサハリンの世論というのはやや日本に対して厳しい状況があったと思います。

ただ、今、先ほど私ちょっと申し上げたかと思いますが、やはりこのエネルギーというのがこれまた何らかの形で日ロ関係の切り結ぶポイントになるのではないかと思うんですが、そういう方向からやはり少し緩和といいますか、日ロ関係改善の方向も出てきていて、そういうことを考えますと、中央のコントロールと同時に、地方のエリートとの関係というものも少し軟化しているのかなという感じが私はしております。

参考人(袴田茂樹君)

サハリンが北方領土問題の本質に関わるような部分でプーチン大統領及び中央の意向とは異なった行動をするということはあり得ません。

ただ、サハリン州の雰囲気はソ連時代の雰囲気を濃厚に保っています。したがって、改革派がリーダーシップを取っていた頃は、例えば領土問題等で、クナーゼ次官だと九〇年代の初めなんですけれども、外務次官、彼が日本との関係を何とかしようとしている頃などには、サハリンの雰囲気は、クナーゼは国賊だと言わんばかりの、そういう雰囲気がありました。改革派がリーダーシップを取っていた頃です。

しかし、最近、プーチン大統領がかなり大国主義的なナショナリズムの雰囲気を強く出しているので、サハリン州がそういう反発をするということはありませんが、ただ、共同経済活動に関しても、サハリンの中では、一方でそれを歓迎する、大いに日本も来ていろいろやってほしいというのとともに、日本のプレゼンスがこれで強まるんじゃないかという、これはソ連時代的な警戒心、そういう人たちもいて、サハリンの中の今の状況は単一ではありません。

以上です。

糸数慶子君

先ほどもありましたけれども、現在のこの北方領土の交渉なんですが、これは日ロ両政府の個人的関係に依存し過ぎということを危ぶむ面もあるわけですけど、今の日本政府は一体として取り組んでいるんでしょうか。これ、袴田参考人にお伺いします。

参考人(袴田茂樹君)

基本的に、領土問題の解決は両国首脳の決断によるものである以上は、両国首脳の信頼関係、それからそれぞれの国における安定した政権の維持というのはこの不可欠の条件だとは思ってはおります。

ただ、今おっしゃった個人的なあれに依拠し過ぎているのではないか、あるいは国内でちょっと他の省庁あるいは組織とどういう関係になっているかという問題ですが、これは今非常に私も懸念している問題で、外務省と官邸が必ずしも一緒ではない。それから、外務省出身の官邸の中の人も、経済関係の省庁の出身者と必ずしも意見が一致するわけではない。今度は、官邸の中では、八項目等の経済プロジェクトに関しては経済関係の省庁の人はもう行け行けどんどんで、つまり、主権問題には彼らはさほど関心がなくて、そういうプロジェクトが進めば自分たちは一つの主役になれるわけですから行け行けどんどんになると。そういういろいろな側面がありまして、私自身もちょっと、日本の政府、外務省、官邸、首相が必ずしも対ロ政策で今一体化していないことをちょっと懸念しております。

糸数慶子君

下斗米参考人にお伺いいたします。

先ほどもこれも出たことではあるんですが、これまでに共同経済活動という提案は出たわけですけど、実際に実現しなかった原因はどこにあるというふうにお考えでしょうか。

参考人(下斗米伸夫君)

糸数先生、これは今申し上げたとおりでございまして、やはり政権が替わったことによって方針が変わったと。

しかし、私はこの問題は、やはり今までの日本外交の問題というのは、全て外務省の中に、いろんなことをリーダー、政権の方がやってきて、したがって外務省の中に自己矛盾が、どうやって進めるのか、2プラスアルファでいくのか4マイナスベータか、こういったような矛盾が沈殿していって、それで、これが森政権から小泉政権になるときにいろんな問題があったと理解しております。その意味では私は、今、これは袴田先生への御質問と重なるわけでございますが、やっぱり政治主導でやるというのは一つの見識だと思うんですよね。

ある政権が、自分の理解する世界像に従って、こういう形で日ロ関係を進めるということを明示して進める。他方、ロシアというのは、これは大統領外交の、憲法で決まっておりますので、大統領しか決められないんです。したがって、これに見合う形で、安倍総理が自分自身のブループリントに恐らく従ってお進めになっている。その全貌は我々は必ずしもまだよく分からないわけですが、恐らくワンサイクルかツーサイクル遅れて知るようになっているのが現状だとは思いますが、その意味でも、やはり政治主導で今は特にプーチンとの関係を含めてもやらざるを得ないというのがそれなりに、やはり外務省は外務省で逆に課題を遂行するという形で整理される方向にあるのかなというふうに理解しております。

糸数慶子君

時間もありませんので、最後に下斗米参考人に今の続きでお伺いいたしますけれども、それでは、このロシアの国内事情、それぞれあるわけですけれど、今後の動向を見ていく上で、大統領以外に例えばキーパーソンになるような人物、注意すべきファクターはあるのでしょうか。

参考人(下斗米伸夫君)

今ちょっと申し上げたかと思いますが、日ロの今の国境、平和条約問題の交渉には最近ずっとエネルギー関係のトップが入っている。セーチン・ロスネフチ社長ですか、それから、あるいはガスプロムの責任者と、こういう人たちが入っているということを我々は注視すべきだと思います。

と同時に、そういうプロジェクトが同時に進行していると思いますので、そういったところがある種の、今のロシアの政経が一緒になって、対アジアシフト、対日関係というふうに動いていると理解してございます。

糸数慶子君

ありがとうございました。

時間になりましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。