国政報告

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難民申請したクルド人の収容の問題、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案、法務局における遺言書の保管等に関する法律案について

第196回国会 2018年6月28日 法務委員会

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。

法案質疑に入ります前に、難民申請したクルド人の収容の問題について伺います。

お手元に参考資料として毎日新聞の記事をお配りしてございます。これ、一昨日の新聞でありますが、日本人女性とその夫であるトルコのクルド人男性に関する記事であります。この記事によりますと、外国人男性は、先に来日していた親族から、日本は優しい人ばかり、いい国だよと聞いて、我が国に難民として庇護を求めるために来日し、約一年三か月収容された後、昨年二月に日本人女性と結婚し、十月に難民認定申請が認められずに再び収容されて現在に至ります。

この夫婦は、昨年六月に約二百人を招いた披露宴を開いたとのことですが、その後僅か二か月で引き離されてしまい、現在は電話かガラス越しにしか会えない状態にあります。女性は入国管理局での面会で、ガラス越しに会う夫の腕や手首に生々しい自傷行為と思われる傷に涙で言葉が出ず、夫の仮放免許可申請を出しましたが不許可とされ、その不許可の理由さえも教えてもらえないとのことです。

仮放免許可を認めない理由を示さないのはなぜでしょうか。法務省に伺います。

政府参考人(和田雅樹君)

お答えいたします。

御指摘のありました個別事案につきましては、個別の事案でございますので答えを差し控えさせていただきますが、一般論として、仮放免の認めない理由を示さないことについて申し上げます。

被収容者やその代理人から仮放免の申請があった場合には、被収容者が入管法違反や刑罰法令違反の事実により退去強制令書の発付を受けた者であることを踏まえ、それまでの情状でありますとか申請の理由などの個別的な事情を考慮するほか、行政訴訟や難民手続などの進捗、あるいは送還に向けての出身国政府や大使館との交渉状況などを基に総合的に判断した上でその許否を決定しているものでございます。

 このように、仮放免は被収容者をめぐるもろもろの要素を考慮した上で総合的な判断の下に決定されるものでございますので、個別具体的に不許可理由を特定することが困難であり、かえってこれを明らかにすることが当該被収容者の心情に影響を与えるなど、今後の処遇面で支障を来しかねないことから、個々の事案については不許可の理由を明らかにしないという運用をこれまで行ってきているところでございます。

糸数慶子君

ただ、このケースの場合、身体を拘束するという状況にありまして、重大な人権の制約においても、入管行政の効率化が優先するということになるのでしょうか。

昨今、仮放免許可を受けている被退去強制令書発付者に対して動静監視が強化され、一旦収容されると仮放免許可がほとんどされず、不許可の場合には理由も示されないまま収容期間が長期化し、被収容者の心や体がむしばまれて、収容施設内で自殺や自傷行為等が度々発生しているとの問題が指摘されております。

先ほど紹介したような事例は、そもそも家族生活の基盤が日本にあるわけですので、在留が認められる方向で検討されるべきだと思いますが、このように直ちに送還できるような状態にはないケースについては少なくとも仮放免許可くらいはされるべきであり、仮放免を不許可にするならば、身体を拘束するという重大な人権の制約を伴う以上は、その理由を示すべきだと思います。

我が国が加入している自由権規約二十三条の家族保護は、収容するか否か、収容後の仮放免の判断に当たり尊重されるべきだと思いますが、大臣の御見解を伺います。

国務大臣(上川陽子君)

退去強制令書、これが発付されている被退去強制者につきましては、その送還までの間、入国管理の収容施設に収容すること、これが法令上定められているものでございます。

仮放免に関する御指摘につきましては、本人の家族関係につきましても仮放免の許否判断におきまして考慮をしているところでございますが、先ほど局長の方から答弁をいたしたとおり、仮放免につきましては、被退去強制者をめぐる種々の要素を考慮した上で総合的な判断の上に決定されるべきものであるため、個別具体的に不許可理由を特定し、お示しすることはなかなか難しいものというふうに考えております。

しかしながら、不許可理由が分からないとして仮放免の申請を繰り返し行う被収容者も一部に見られることから、一般的にどのような場合に仮放免が認められ、あるいは認められないのかを明らかにするか否かにつきまして現在入国管理局におきまして検討をしているところでございます。

糸数慶子君

是非、人権という視点から大臣のリーダーシップを発揮していただきたいということを強く要望したいと思います。

それでは、法案審議に入ります。

一九九六年の法制審答申の民法改正案要綱のうち、審議が始まった九一年当初は婚姻法や離婚法が中心で、婚外子相続分規定については入っていませんでした。二年後の九三年に婚外子相続分規定が追加されましたが、追加の理由を法務省にお尋ねいたします。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

平成八年二月に答申されました民法の一部を改正する法律案要綱について検討を行った法制審議会民法部会におきましては、平成三年から調査審議が開始されておりますが、御指摘のとおり、嫡出でない子の相続分の取扱いについては、当初は検討対象に含まれておりませんでした。もっとも、平成五年に、東京高等裁判所において、嫡出でない子の相続分を嫡出子の二分の一とする当時の民法の規定が憲法に違反するとの決定がされ、また、同じ年に、市民的及び政治的権利に関する国際規約の実施状況に関する国連の規約人権委員会の審査におきまして、我が国の民法の規定が国際規約に適合しないとのコメントが示されたところでございます。

こういったような事情を踏まえまして、法制審議会民法部会においては、平成五年以降、嫡出でない子の相続分についても検討の対象に加えることとし、最終的に取りまとめた要綱においてもその見直しが盛り込まれたものと認識しております。

糸数慶子君

今回の法改正の発端は、最高裁が、二〇一三年九月四日、婚外子相続分規定を違憲と判断したことによります。

違憲決定直後の会見で、当時の谷垣大臣は、婚外子の相続分規定の民法改正だけでなく戸籍法の改正についても言及していましたが、法案の提出には至りませんでした。その理由を上川大臣にお伺いいたします。

国務大臣(上川陽子君)

平成二十五年の九月の四日の最高裁判所の判断を受けまして、政府におきましては、嫡出でない子の相続分に関する規定を見直す民法改正案とともに、嫡出子又は嫡出でない子の別を出生届出書の記載事項とする旨の規定を削除する戸籍法の改正を検討していたということにつきましては事実でございます。

しかしながら、民法の改正につきましては最高裁判所の違憲判断を受けておりまして、違憲状態を早期に是正する必要があったのに対しまして、戸籍法の規定につきましては違憲判断を受けていなかったということがございまして、民法と同時に改正するほどの緊急性に乏しいと判断をし、政府として国会への提出を見送ったもの、こうした経緯があったものというふうに理解をしております。

糸数慶子君

民法改正論議を振り返りますと、法務省はもちろんその議論の積み重ねをしています。むしろ政治がそれをさせなかったというのが事実ではないでしょうか。

例えば、前回、一九八〇年の相続法改正の際、婚外子の相続分の平等化が提案されていましたが、反対論が強く、見送られています。九六年の法制審答申については、当時、民事局の参事官が議員会館に日参して説明を繰り返しておりましたが、強硬な反対で閣議決定されませんでした。

二〇一三年九月に最高裁が婚外子の相続分規定を違憲としましたが、いきなり違憲判断されたのではありません。お配りしております資料を見ていただければお分かりでございますが、司法は度々立法府に法改正を促してきました。九三年には東京高裁が違憲決定し、この決定が確定しています。その後、九四年、二〇一〇年、二〇一一年と、高裁レベルでは違憲判決が確定しています。

最高裁も、九五年に大法廷が合憲決定いたしましたが、五人が違憲としました。合憲とした裁判官も、結論には同調したものの、立法理由との関連における合理性はかなりの程度に疑わしい状況に立ち至った、あるいは国会における立法作業によるべきだと補足意見を述べています。これは、まさに翌年の法制審答申をにらんで合憲判断されたのではないかと思われました。その後、度々、小法廷は、極めて違憲の疑いが濃い、立法府の裁量の問題として看過し得ない非合理的な規定であると補足意見を述べてきました。

法制審議会が五年も審議をして答申した内容に司法も言わば後押しをしてきたわけですから、堂々と法改正を主張すべきでした。政治が行政をゆがめているのは森友、加計問題だけではなく、家族法についても同じことが言えます。

法務省は、合理的な理由を示すことなく反対する声の大きい一部政治家の代弁者になるのではなく、憲法や条約に基づいて政治家に理解してもらうよう、その努力をすべきではないでしょうか。法務省に伺います。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

一般論として申し上げますれば、法務省としては、法制審議会における調査審議の結果であるその答申の内容については重く受け止めるべき立場にあり、その答申の内容が一定の法改正を求める内容である場合には、速やかに立案作業を行い、国会に改正法案を提出するのが望ましいと考えております。

他方で、法務省が所管する民法を始めとする民事基本法の改正は国民生活に大きな影響を与えることとなりますことから、その是非については、国民の意識を踏まえて慎重に検討を行う必要もあるものと考えております。特に、家族法の改正につきましては、社会の価値観や家族の在り方が多様化している中で、国民の間でも様々な意見があり、解決が難しいテーマであると認識しております。

法務省としましては、国民の意見にしっかりと耳を傾け、立法事実等に関する必要な調査を尽くした上で必要な法制上の措置を講ずることができるよう、不断の検討を重ねていきたいと考えております。

糸数慶子君

私は、この委員会で、九六年の法制審議会の答申を立法化しないことを問題にしてまいりました。上川大臣は、重く受け止めるとしながら、慎重な姿勢を崩していません。法制審の答申を受けながらそれに応えない大臣が今回の相続法制について法制審議会に諮問されたのはなぜか、その理由をお伺いいたします。

国務大臣(上川陽子君)

相続法制の見直しのように、国民の生活に大変大きな影響を与える基本的な制度の見直しに当たりましては、学識経験者、実務家、有識者から成ります法制審議会におきまして慎重な検討をしていただいた上で法案を立案するということが相当であるというふうに考えております。

平成八年の法制審議会の答申に含まれる改正項目のうち、まだ実現していないものもございます。選択的夫婦別氏制度の導入の問題でございまして、我が国の家族の在り方に深く関わる事柄であります。国民の間にも様々な意見があるということから、現在まで実現に至っていないものでございます。

この点につきましては、世論調査の結果等、国民的な議論の動向を踏まえながら引き続き対応を検討してまいりたいと考えておりまして、法制審議会に諮問する立場にある法務大臣といたしましては、法制審議会における審議及びその結果である答申につきましては大変重く受け止めるべきものであるというふうに考えております。

今回の相続法の見直しにつきましても、さきに述べたような理由から法制審議会に対して諮問を行ったものでございます。

糸数慶子君

これまで、九六年のその法制審議会の答申を是非立法化していただきたいということで質疑をしてまいりましたけれども、先ほど仁比委員からも細かくありました。やはり、今、世の中のこの家族の在り方に関しましては、多様性というのも認められてしかるべきでございます。

是非とも、様々な時代の流れの中でのその多様化、多様性というのを是非前面に押し出して頑張っていただきたいということを強く申し上げたい。

終わりたいと思います。ありがとうございました。