国政報告

議事録議事録一覧へ

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案、法務局における遺言書の保管等に関する法律案について ※参考人質疑

第196回国会 2018年7月30日 法務委員会

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。

参考人の皆様には、貴重なお話を伺うことができ、大変感謝申し上げます。

まず、大村参考人に伺います。

大村参考人は、法制審議会で様々な民法の見直しの審議に関わってこられていますので、まず、法制審議会の答申が立法化されないことについて伺います。

一九九六年、平成八年に答申された民法改正案要綱が立法化されない状況が長らく続きました。法制審議会は審議会の中で最も権威があると言われ、答申が立法化されないのは、家族法ではこの答申だけとなっていました。答申のうち、婚外子相続分規定は、二〇一三年九月に最高裁の違憲決定を受け、答申から十七年後に法改正されました。再婚禁止期間は、二〇一五年十二月の違憲判決を受け、翌年、答申から二十年遅れて法改正され、婚姻適齢は法改正まで二十二年掛かりました。しかも、改正の理由が法制審の答申理由と変わっていないことが法務大臣の答弁でも明らかになりました。

学者、実務家、有識者等を構成メンバーとして、法制審議会民法部会身分法小委員会が五年の歳月を掛けて改正すべき法案の中身を調査そして審議し、総会の議を経て答申された民法改正案要綱が、長い間、様々な意見があるという理由だけで法改正されてこなかったことについてどのような御見解をお持ちでしょうか、お伺いいたします。

参考人(大村敦志君)

ありがとうございます。

九六年の答申自体に私は関わっておりませんけれども、一般論として、法制審で答申されたものについて立法していただけるということが、答申をする側としては強く希望するところでございます。

ただ、一九九〇年代までの状況と二〇〇〇年代の状況というのが多少違うところがございます。九〇年代までは、法制審議会の民法部会、その下に財産法小委員会と身分法小委員会というのがありましたけど、ここは言わば、何というんでしょうか、専門家の集団であると。専門家が専門家の観点として望ましいものを提案していくと、こういう色彩が強かったというふうに思います。専門家としては、私は九六年の案でよいというふうに思うところがございますけれども、それがなかなか社会的なコンセンサスの得られるものとならなかったということなんだろうと思います。

二〇〇〇年代になりますと、審議会のメンバーの方に様々な非法律家の方々も多く加わるようになってまいりました。そうなりますと、答申自体が、先ほど来私が申し上げておりますように、様々な御意見を調整したものになるということで、専門家の観点からいうとやや物足らないものになりますけれども、しかし、国会等で御審議をいただくという場面では多くの方に御賛同いただけるものになっていると、こういうふうな関係があるのではないかというふうに思っておりますので、今後、法制審で答申するものにつきましては、国会で御議論いただいて賛成をいただけるようなものを、もし委員になった場合にはつくり出せるように努めてまいりたいというふうに思っております。

糸数慶子君

次に、二宮参考人に伺います。

今回の相続法制の改正は、最高裁が二〇一三年九月四日、婚外子相続分規定を違憲判断したことが契機となっています。くしくも、二宮参考人は、法案審議の参考人として意見を述べておられますので、この当時の慎重意見についても理解されているかと思います。

しかし、この慎重な意見は、実は二〇〇八年の国籍法改正のときまで遡ります。婚姻関係にない外国人女性と日本人男性の子供の国籍確認を求めた訴訟で、最高裁が六月四日、父母の婚姻を国籍取得の要件としている国籍法三条を憲法違反と判断しました。違憲判決を受け閣議決定された法案の審議では、驚くような排外主義の反対意見が展開されました。当時の改正は、胎児認知には国籍を認め、出生後認知には更に婚姻要件を課すことが憲法違反とされ、婚姻要件を削除しただけであり、偽装認知の防止策として罰則規定を新たに設けたにもかかわらず、法案審議では偽装認知の防止に議論が集中いたしました。この排外主義の反対運動は、翌年の女性差別撤廃条約選択議定書の批准に向けた議論で、さらに二〇一三年の婚外子相続分規定の見直しの際にも、国籍法の二の舞になるなというその掛け声で反対キャンペーンが展開されました。

この反対論者が婚外子相続分規定の改正に条件を付けて戸籍法改正を阻止し、相続法制のワーキングチームをつくる経緯となったことについてどのような見解をお持ちか、お伺いいたします。

参考人(二宮周平君)

見解ということでいいますと、まあそれは変だなと思います。

基本的には、婚外子の平等を徹底することができませんでした。相続分差別が平等になっても、嫡出子と嫡出でない子は立場が違うんだということを明示するためにこの戸籍法改正を阻止したのだと思います。最高裁大法廷決定は子供を個人として尊重するということを明確に示していますので、そのことについて次の最高裁小法廷が違憲ではないとしたことが大きな影響を与えていると思いますけれども、やはり基本には、法律婚を尊重すべきであると、それは婚外子の差別があっても当然だというこのトーンが消えていません。

したがって、今回の相続法改正であっても、法律婚配偶者の居住権の保護、あるいは法律婚配偶者の財産形成についての寄与、貢献をいかに評価するかというところが出発点だったので、法律婚じゃない人たちを、まあ言葉を使いますと排除するような、そういう提案になったのだと考えます。

糸数慶子君

引き続き二宮参考人に伺います。

今回創設される特別寄与制度の対象から、事実婚や同性パートナーは排除されています。私はこの委員会で、夫婦同姓しか認めない現行制度は、それぞれが名前を名のりたいというカップルに法律婚を諦めさせ事実婚に向かわせるわけですから、法律婚の推奨という婚姻制度の目的に逆行するのではないかと度々指摘してまいりました。

この点について、二宮参考人の御見解を伺います。

参考人(二宮周平君)

繰り返しになりますが、法律婚は全ての人に開かれたものであるべきだと考えます。先ほど大村参考人がおっしゃったように、もちろん、法律婚じゃない選択をした人にも、それにふさわしい処遇、対応というのはしなければなりませんけれども、あるカップルは法律婚が認められ、あるカップルは認められないという、そこは平等にしていく必要があると思うのです。ですから、別姓を希望する人、同性カップルの人たちに法律婚を認めることが逆に法律婚制度を広げていくことになるわけですから、方向としてはその方向が望ましいと考えています。

糸数慶子君

今回の法改正は、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み行われるわけですが、家族の多様化について言及がありません。むしろ、変化が著しいのは、その家族のありようや価値観の多様化であろうと思います。しかしながら、家族の形や意識のその変化のスピードに法改正が追い付いていないというのが現状ではないかというふうに思います。

今回の法改正にとどまらず、二宮参考人が見直すべきだというふうにお考えになる法や制度はありますでしょうか。

参考人(二宮周平君)

まず、その前提として、今回は相続法の改正ですので、相続法の中でどうしたら多様性を取り込むことができるのかということになると、千五十条の特別寄与の条文しかないと思いますので、だからこそ多くの方がこの条文の適用対象者を広げることに御意見が出たんだろうと思います。

相続法改正を除いて必要なこととなりますと、もうこれも繰り返しになりますけれども、選択的夫婦別氏制度の導入と同性による法律婚の承認、これに尽きると思います。さらに加えて言えば、生殖補助医療に関して適切な規制を、規制というよりも規律ですね、抑制するのではなくて規律していく必要がありまして、これは大村参考人がおっしゃっていましたように、二〇〇三年の法制審議会の親子法部会の報告が出ているんですけど、それは塩漬けになっています。

そこも含めて生殖補助医療の在り方については立法が必要だろうと思いますし、それからもう一点、最後に述べさせていただきますと、妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子と推定するという民法七百七十二条の規定も改める必要があろうかと思います。婚姻中出生した子は夫の子と推定するという規定とか、あるいは嫡出否認権を妻や子供に平等に認めていくといったような法改正も求められるのではないかと考えます。

糸数慶子君

大変示唆に富むお話をいただきまして、ありがとうございます。今回の法改正に向けた議論の参考とさせていただきたいと思います。

以上で終わります。ありがとうございました。