国政報告

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裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について

第197回臨時国会 2018年11月22日 法務委員会

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。

質問に入ります前に、法務委員会の開催を度々職権で行われてきた横山委員長に一言お願いを申し上げます。

いわゆる給与法案は与野党が賛否で対決するような法案ではなく、日程的にも余裕があったにもかかわらず、野党議員の意見に耳を貸すことなく職権で理事懇や委員会を開催されました。就任早々から誠実とは言えない委員長の対応については大変憂慮しております。

今後の委員会運営におきましても、野党にもやはり意見を聞いて、その意見を尊重して運営をしていただきたい。誠実に対応されるようにお願いを申し上げます。

本日は、裁判官の報酬等の改正案、検察官の俸給等の改正案についての審議でありますが、賛成の立場を表明した上で質問に入ります。

まず、女性の雇用拡大及び男女賃金格差是正と移民政策について伺います。

安倍総理は、所信表明演説で、少子高齢化という我が国最大のピンチもまたチャンスに変えることができるはずです、この五年間、生産年齢人口が四百五十万人減る中でも、女性活躍の旗を高く掲げることで、女性の就業者は逆に二百万人増やすことができましたと自画自賛されました。確かに女性の雇用者数は増えておりますが、非正規雇用が増えても、少子高齢化のピンチをチャンスに変えることなど到底できません。

二〇一七年の男性の平均賃金は三十三万五千五百円で、女性では二十四万六千百円で、男性を一〇〇とした男女間賃金格差は、過去最小とはいっても七三・四で、一時間当たりで比較をいたしますと、正規雇用の男性と短時間労働の女性では二倍の格差があります。

二〇一二年四月、OECDのグリア事務総長が来日された際に、日本は国内の経済格差にもっと危機感を持つべきと指摘されました。社会の階層化と収入格差の拡大に取り組む必要があるというふうに指摘をされております。その上で、グリア事務総長は、急速な高齢化による問題を緩和するためには、日本は男女間の収入格差を是正する必要がある、既に日本の労働人口はOECD中最も高齢である、女性を社会に参画させなければ日本は急速に衰退していくであろう、埋め合わせのための唯一の方策は積極的な移民政策だと強調されております。

今回の入管法改正は、労働力不足を外国人材の受入れで解消しようとしていますが、一方で、移民政策ではないと強調されています。外国人受入れの環境整備も整わず、移民の受入れには消極的、社会の階層化と収入格差も男女の賃金格差も解消されず、まさにグリア事務総長の日本は急速に衰退していくであろうという指摘は現実のものとなっていると言わざるを得ません。

この指摘を山下大臣はどう受け止め、衰退をどう解決されようとしていらっしゃるのでしょうか、お答えください。

国務大臣(山下貴司君)

お答えいたします。

委員お尋ねのOECDのグリア事務総長の御指摘、これは内閣府の男女共同参画室のホームページにも出ておるところではございますが、まずもって女性の社会参画の推進を実現しなければ日本は急速に衰退していくだろうという女性活躍推進の視点からの貴重な御指摘であるというふうに認識しております。もとより、この女性活躍につきましては安倍内閣でも積極的に推進をしてきたところでございまして、そういった成果もしっかりやらなければならないと思っております。

男女の賃金格差等の解消による男女格差の是正については法務省としても非常に重要と考えておりまして、これも政府全体で取り組む必要があると考えておりますし、また、例えば女性に対する人権侵害につきましても、前にお話ししたとおり、積極的に取り組んでいるところでございます。そういったことで、法務省としても、政府の一員として積極的に男女格差の是正に取り組み、貢献してまいりたいというふうに考えております。

そして、お尋ねの新たな外国人材の受入れに関しましては、これはまず国内人材の確保、これをしっかりやっていただくということが大前提でございまして、その中には当然ながら女性活躍の推進といったことも、これも含んでいるというところでございます。

そうしたことも含めてしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

糸数慶子君

今大臣からるる答弁がございましたが、入管法改正については、懸念が払拭されないまま、今、国会で拙速に成立させるのではなく、やはり環境整備が整ってからでも遅くはないということを改めて申し上げたいと思います。

昨年九月、安倍総理は、国難突破解散という大義で総選挙を行いました。会見で、急速に少子高齢化が進むこの国がこれからも本当に成長していけるのか、この漠然とした不安にしっかりと答えを出してまいりますと述べられました。

しかし、安倍総理に答えを出すのは不可能だと確信しています。なぜなら、漠然とした不安と捉えていること自体、危機感が足りないのではないかと言わざるを得ません。

二〇〇五年の合計特殊出生率が過去最低の一・二六であったことが公表された当時、安倍総理は政権の中枢にいらっしゃいました。多様な家族の否定にも奔走されていました。女性が子供を産まない、産めなかったのは、結婚や出産適齢期である層が経済的に不安定だったことや子供に対する負担感が増大していたことが要因であったにもかかわらず、当時、家族のきずなの再生に奔走されていたのが安倍総理を中心とした方々であったということをここで改めて申し上げておきたいと思います。

次に、家庭裁判所の充実について最高裁にお伺いをいたします。

昨年十二月七日の給与法改正と今年四月十日の定員法改正の法案質疑で、家庭裁判所の充実について伺いました。

訴訟事件件数の中で家事事件のみが増加傾向にあり、その事件内容も複雑化し、当事者やその子供の中には精神的課題を抱えた人も増えており、紛争の自律的解決としての調停合意に向けて困難な状況もあることから、専門性を持つスタッフの果たす役割が大きいと期待されている、家事事件の増加に伴い、調査官、医務室技官を増員する必要があるのではないかというふうに伺いました。

十二月七日の答弁では、家庭裁判所全体としての事件動向を見ると、少年事件はこの十年間だけでも約三分の一程度に減少し、家事事件の事件動向を考慮しても、現時点で家庭裁判所調査官や医師等について、現有人員の有効活用によって全体としては適正迅速な処理を図ることが可能であるというふうに答弁されました。

そこで、四月十日、家事事件は金銭と感情の絡む事件、紛争であり、紛争のポイントを見極めた上で丁寧な事案の進行を行う必要がある、当事者の納得を得た解決でなければ、事件終了後、履行が確保されない、迅速、合理的な事件処理が紛争解決として必ずしも妥当しないのではないかと質問したところ、家庭裁判所におきましては事案に応じてその適正な審理に努めていると答弁をされました。

そこで、改めて伺います。

二〇一七年度でも家事事件は増加し、事件内容、当事者も多様化、複雑化しております。その背景には、高齢社会の中で能力、判断が低下した高齢者の増加による成年後見事件の増加、この成年後見事件だけでなく、既に開始した事件について、後見監督処分、後見人の報酬請求事件なども含みます。遺産分割事件、相続放棄申立てなど被相続人の高齢化に伴う相続事件の多様化、複雑化を伴う増加、また、離婚、婚姻費用分担事件、未成年の子に関わる養育費、面会交流事件、家族関係の多様化により夫婦関係事件では高葛藤事案が含まれ、さらに、子供の利益を踏まえた紛争解決の必要性があるなど、家庭裁判所の役割は増大しています。

そのため、家庭裁判所としても様々な努力を行っていると伺っていますが、例えば、各家庭裁判所で親ガイダンスの取組など始まっています。しかしながら、家庭裁判所の人的、物的充実は十分とは言えません。

そこでお伺いいたしますが、最高裁に人的な充実についてお伺いします。

家事事件について専門性を有する調査官を始め、スタッフを充実させる必要があると思いますが、最高裁の御見解を伺います。

最高裁判所長官代理者(村田斉志君)

お答え申し上げます。

家事事件につきましては、今委員御指摘のとおり、近年、事件数は増加傾向にございます。そこで、裁判所といたしましては、家事事件への対応を充実強化するという観点から、事件処理にたけた判事のみならず、裁判所書記官も相当数増員するといった人的体制の整備を図ってきたところでございます。

また、事件の内容が複雑困難化しているという御指摘もございました。そのとおりかというふうに思います。適正迅速な解決を図っていくためには、委員の御指摘にもございましたが、心理学、社会学、教育学、社会福祉学等の行動科学の専門的知見及び技法を有する家庭裁判所調査官がその役割を果たすということが重要だというふうに考えております。

ただ、もっとも、これも委員の御指摘の中にもございましたけれども、家庭裁判所全体での事件動向ということで見ますと、家事事件の増加の一番大きな要因は成年後見関係事件が累積的に増加しているというところによるものであります。この成年後見関係事件に関しましては、家庭裁判所調査官の関与というのはその場面が限定的だというところがございます。また、少年事件の事件数につきましても、平成二十一年には二十一万二千七百五十一件であったものが平成二十九年には七万四千十九件と約十万件減少しているというところがございます。

このような事件動向を踏まえますと、確かに委員御指摘のように、子をめぐる紛争のようなもので著しく解決が困難な事件が増加しているというところもございますけれども、全体の事件動向を踏まえますと、現時点では、家裁調査官については、現有人員の有効活用をすることによって全体としては適正迅速な対応が可能であると考えております。

裁判所といたしましては、委員御指摘のように、家庭裁判所に対する期待というのが高まっているということは我々も認識をしているところでございますので、事件動向等を注視しつつ、今後とも必要な体制の整備には努めてまいりたいというふうに考えております。

糸数慶子君

次に、物的充実についてお伺いいたします。

例えば、東京家裁では、新たに調停室への転用を図り、調停室を増やしていると伺っていますが、調停室に空き室がなく、次回調停期日の調整に苦労したり、事件増に対して午後二回の調停期日を設定してはいるものの、短時間で調停が終了する見込みがない場合は午後二回の調停期日を有効に活用することが難しい。さらに、家事調停では裁判官との評議の充実が必要となりますが、裁判官がほかの事件の評議が入っている場合には評議の順番待ちといった状況になると伺っています。

人的だけでなく物的充実についても更なる取組が必要と思いますが、今後どのように行われるのか、最高裁に伺います。

最高裁判所長官代理者(笠井之彦君)

お答え申し上げます。

家事事件の適正迅速な処理は裁判所の重要な責務であるというふうに考えております。そのために必要な、例えば調停室等の物的体制の整備についても、庁舎の規模や部屋の配置、事件数の動向等を踏まえましてこれに努めてきたところでございます。

委員御指摘の東京家裁でございますけれども、平成二十五年から二十六年にかけて調停室を六十六室から八十六室に増室するなどしているところでございますけれども、今後とも、家事事件の適正迅速な処理が可能となりますよう、必要な物的体制の整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

糸数慶子君

私はこれまでも最高裁にエールを送ってきたつもりですが、来年、創設から七十年を迎える家庭裁判所にエールを込めて幾つか質問したいと思います。

最近、このような本を読ませていただきました。これは「家庭裁判所物語」という本ですが、この本を書いたのは、司法担当記者をされた経歴を持つ、現在NHKの解説委員をされている清永聡さんです。この本は、戦後の混乱が続く中、一九四九年に新しい憲法の理念に基づいて生まれた家庭裁判所の成り立ちと足跡の貴重な資料と証言を基に書かれたものであります。

まず、最高裁に伺いますが、家裁の創設に多大な貢献をされた家庭裁判所の父と呼ばれた方のお名前と、その方が家裁の普及のために作られた標語をお示しください。

最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君)

お答え申し上げます。

委員御指摘のとおり、家庭裁判所は昭和二十四年一月一日に創設をされまして、平成三十一年一月一日、来年の一月一日に創設七十周年を迎えるところでございます。

今御指摘をいただきました本につきましては私も拝読をさせていただいているところでありまして、お名前につきましては宇田川潤四郎先生と、裁判官というふうに認識をしております。それから、設立当初の標語につきましては、「家庭に光を、少年に愛を」というふうに認識をしております。

糸数慶子君

なぜこのような標語が必要だったのかということですね。

戦争で親もそれから家もなくした子供たちが浮浪児として社会から冷たく扱われていた現実がありました。一九四八年九月に閣議決定された浮浪児根絶緊急対策要綱には、浮浪児に物をやるな、浮浪児から物を買うなの運動を強く展開して、浮浪児生活の温床を断つことなどと書かれ、戦災孤児がまるで野良犬か厄介者、あるいは犯罪者のように扱われていたという背景があったことが記されています。

戦争で傷つけられた弱い人々を救う役割を担おうと家裁創設に奔走したのが宇田川潤四郎、日米開戦前にニューヨークの家庭裁判所を視察した内藤頼博、女性初の裁判官となった三淵嘉子ら、第一世代と言われる方々であります。

しかし、創設までには多くの困難があったと言われております。戦前、少年審判所を運営していた検察が裁判所の運営することを厳しく抵抗したことや、独立した裁判所の庁舎造りのため、莫大な資金調達と人材の確保で創設当時の関係者の苦労は並々ならなかったことが分かります。

創設七十年を迎えるに当たり、新しい憲法の理念に基づいて生まれた家庭裁判所の創設に多大な貢献をした第一世代へどのような思いをされているのでしょうか、お伺いいたします。

最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君)

お答え申し上げます。

家庭裁判所は、家庭や親族間の問題が円満に解決され、非行に及んだ少年が再び非行に及ぶことがないよう、事案に応じた適切、妥当な措置を講じ、将来を展望した解決を図るという理念に基づいて創設された裁判所であり、こうした理念が、「家庭に光を、少年に愛を」という家庭裁判所創設当時の標語に込められているものと承知しております。

私もあの本を拝読させていただきまして、戦後のあの非常に厳しい中で、この理念を掲げて奔走、奮闘されたことに非常に感銘を受けたところでございます。

以上でございます。

糸数慶子君

この本で興味深かったのは、今から五十年以上前の少年法改正論議です。

少年事件が相次ぐ中で、少年法の対象年齢の引下げを求める意見が昭和二十年代から上がっていたということです。一九五一年には法務省が少年法改正草案を作成し、保守系政治家から、少年を甘やかすな、厳罰化をという意見が強まり、批判の矛先が少年法と家裁に向けられたということです。少年法成立過程を知らない人たちは、少年法はGHQの押し付けなどと声を上げ、保守系政治家と歩調を合わせて改正に動き出したとも書かれております。まさに最近の少年法改正議論とも重なります。

その際にも、改正の根拠とされた少年事件の多発化、凶悪化の誤りを最高裁はデータを使って否定し、法務省の統計の取り方が最高裁とでは違うことを示した上で、法務省の年齢引下げ論に反論したことが紹介されています。

結果、引下げは行われませんでした。まさに当時の最高裁が人権のとりでとしての役割を果たされたものだと思います。同時に、データの改ざんで立法事実がゆがめられるというのは今に始まったことではなかったということを申し上げ、質問を終わりたいと思います。

ありがとうございました。